タランティーノも魅了された“90年代日本映画”!黒沢清を世界に知らしめた評論家や、山下敦弘監督らが語る

コラム

タランティーノも魅了された“90年代日本映画”!黒沢清を世界に知らしめた評論家や、山下敦弘監督らが語る

“90年代日本映画”の勢いを評論家と制作者、それぞれの視点から分析する第1部

さて、ここからは今回のシンポジウムの詳細に触れていきたい。第1部の「私と90年代日本映画のディスタンス」では、黒沢監督の才能を『CURE』を通して欧米の映画ファンに伝えた、前記の映画評論家フロドン氏と、黒沢監督の『スパイの妻』(20)の脚本を『ドライブ・マイ・カー』(公開中)の濱口竜介監督と共に担当し、最新作『三度目の、正直』(21)が今年のTIFFのコンペティション部門に選出された野原位監督が登壇。勢いのあった90年代の日本映画を、同時代を感覚で知るフロドン氏がどのように見ていたのか?一方、当時はまだ10代で90年代の日本映画を後追いで鑑賞し、「90年代に低予算で作られたVシネマのあの熱量に心動かされた」と語る野原監督が、先輩たちの映画をどう分析するのか?そんな年の離れた2人のクロストークが、相米慎二監督の撮影現場やカンヌ国際映画祭にも取材で訪れたことのある、90年代の日本映画に精通した映画ジャーナリストの金原由佳氏の司会で展開される。フロドン氏と野原監督、それぞれの位置や関わり(ディスタンス)から見つめた、現在の日本映画にもつながる楽しい話が聞けそうだ。

黒沢清監督の才能を米の映画ファンに伝えた映画評論家ジャン=ミシェル・フロドン
黒沢清監督の才能を米の映画ファンに伝えた映画評論家ジャン=ミシェル・フロドン

最新作『三度目の、正直』が第34回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された野原位監督
最新作『三度目の、正直』が第34回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された野原位監督

インディペンデント映画の躍動から当時のカルチャーまでを語り合う第2部

そして第2部の「インディペンデント映画が躍動した90年代」では、『苦役列車』(12)や『オーバー・フェンス』(16)などの山下敦弘監督と、山下監督とは旧知の仲で、山下監督の短編も収めた「実験4号 伊坂幸太郎×山下敦弘」の編集にも携わったライターで編集者の門間雄介氏との対談が実現。90年代の山下監督はまだ大阪芸術大学芸術学部映像学科の学生で、先輩だった熊切和嘉監督の『鬼畜大宴会』(97)などの作品にスタッフとして加わり、99年の『どんてん生活』で長編監督デビュー。一方の門間氏は東京で大学生活を送っていたそうなので、2人のトークはその時代の実体験を中心に、90年代のカルチャーにも及ぶ話になりそう。同年代の2人だけに、同時期に同じ作品で盛り上がっていたに違いないが、大阪と東京とで微妙なズレが出たりするかもしれない。そのあたりも含めて、90年代の映画やカルチャーのブームを知ることができるまたとない機会。2人のトークを聞けば、日本映画への興味がさらに高まるのは間違いないだろう。

『苦役列車』(12)や『オーバー・フェンス』(16)などの山下敦弘監督
『苦役列車』(12)や『オーバー・フェンス』(16)などの山下敦弘監督


なお、シンポジウムへの参加希望者は、最初にも書いたように文化庁映画週間の公式サイトから事前予約が必要。本記事を呼んで、「おもしろそう!」と興味を持った人はぜひ申し込んで、ここでしか聞けない「90年代日本映画」の魅力満載なトークに耳を傾けてみてほしい。

文/イソガイマサト

※記事初出時、一部情報に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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