『ミュジコフィリア』東京初上映に、映画初主演の井之脇海が感無量!「こんなにうれしいことなんだ…」
11月4日(木)までTOHOシネマズ日比谷で開催される「10万分の1秒の音響映画祭」。オープニングを飾った『ミュジコフィリア』(11月19日公開)の東京プレミア上映記念舞台挨拶が26日に行われ、長編映画初主演を務めた井之脇海を筆頭に、松本穂香、川添野愛、メガホンをとった谷口正晃監督が登壇した。
「10万分の1秒の音響映画祭」は、映画の要である“音”を10万分の1秒単位までこだわり抜いたTOHOシネマズのハイエンドシアターである「プレミアムシアター」で、映画の世界を肌で感じる音響体験を存分に堪能する映画祭。開催期間中には『ラ・ラ・ランド』(17)や『ボヘミアン・ラプソディ』(18)といった音楽映画をはじめ、『燃えよドラゴン ディレクターズ・カット』(73)から『名探偵コナン 緋色の弾丸』(21)まで、洋画・邦画・アニメ・ドキュメンタリーなど31作品の幅広いラインナップが上映される。
そのオープニング作品として上映された『ミュジコフィリア』は、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を2度にわたって受賞している漫画家、さそうあきらの同名マンガを、『時をかける少女』(10)の谷口監督が映画化した青春群像劇。京都の芸術大学に入学し、ひょんなことから現代音楽研究会に引き込まれた朔。天性の音楽の才を持ちながら、父や兄へのコンプレックスから音楽を憎んできた朔だったが、ピアノ科の凪との出会いをきっかけに、秘めた才能を開花しはじめていく。
会場となるTOHOシネマズ日比谷のスクリーン1は、音響のみならずスクリーンにもこだわり抜かれており、19.8メートル×8.3メートルのラージスクリーン「TCX」を前に井之脇は「こんなに大きい会場と思っていなくてびっくりしています」と目を丸くする。そして「朔という青年はピアノの天性の才能がある男の子だけど、自分のことを天才だと思っていない、音楽への愛が溢れている青年。僕自身も音楽を楽しみながら演じることが大切だと思って撮影に臨みました」と振り返る。
キャスト陣は役作りのために皆それぞれ楽器の特訓に励んだとのことで、「手も頭も疲れて大変でしたが、夜にピアノを弾く時間がむしろリラックスタイムになっていました。おかげで楽しみながら、ピアノと一緒に撮影を乗り切ることができたと思います」と、宿泊先のホテルにピアノを用意してもらって毎晩練習を重ねたことを明かす井之脇。一方で松本もギターの練習に加え、歌唱シーンのためにボイストレーニングを行ったとか。
そんな2人が「おもしろいシーンでしたよね」と手応えをのぞかせたのは、物語の舞台となる京都の鴨川の中洲での演奏シーン。「ちょっとファンタジーっぽいシーンになっている」と語る井之脇は、「撮影の時に伴奏の楽譜がなくて、監督にアドリブで弾いてほしいと言われて、どうしようと思って…(笑)。最初は戸惑ったんですけど、中洲から見える景色や松本さんの歌声が圧巻で、それに呼応して僕も楽しく演奏できました」と満足げ。それには谷口監督も「中洲にピアノを置きたいと言った時はスタッフも目を白黒させていましたが、結果的にやって大正解でした」と自信満々の表情を浮かべた。
そして舞台挨拶の最後に井之脇は「この映画は僕にとって初主演の映画。16年くらいこの仕事をさせていただいて、やっとかという気持ちと、いち映画に携わる人として皆さんに主演作を観てもらえるのがこんなにうれしいことなんだと心から感じています。昨今なかなか人と思うように会えないなかで、この映画を観ていただけたら自分の好きなものを通してつながっていくように、なにか響くものがあるんじゃないかなと思います」と感慨深げに呼びかけていた。
取材・文/久保田 和馬