井浦新、『恋する寄生虫』は「軽く想像を超えてきた!」と柿本ケンサク監督を絶賛
三秋縋のベストセラー小説を原案に、林遣都と小松菜奈のW主演で映画化した『恋する寄生虫』(11月12日公開)のスペシャルトーク付き試写会が、10月28日に神楽座で開催。本作で主人公2人の出会いに関わる謎の男、和泉役を演じた井浦新と柿本ケンサク監督が登壇し、本作に懸けた想いを語り合った。
『恋する寄生虫』は、林と小松が演じる孤独な2人が「虫」によって「恋」の病に落ちていくという、臆病者たちの切なくも美しいラブストーリー。CMやミュージックビデオなど多岐にわたり活躍し、現在放送中の大河ドラマ「青天を衝け」のタイトルバック映像を制作した柿本ケンサク監督がメガホンをとった。
井浦は本作を観た感想について「正直、映像は軽く想像を超えてきて、こんなになっていたのか!僕はこの世界観のなかでお芝居をしていたのかと驚きました。現場で気づけなかった想像以上のものを監督が仕上げられていたので」と興奮しながら絶賛した。
また、井浦は照明にも驚いたそうで「普段はモニターとか観ないんですが、今回はどんなふうになっているんだろうと気になって。照明の具合はもちろん、撮影監督のアプローチも新鮮だったので、どう映っているんだろうと、いろんなことを想像してました。仕上がりがまったく想像がつかないことってなかなかないので」とうなる。
柿本監督は現場に、虎の巻である「マスターショット100」を持ち込んでいたそうで「撮影監督と2人でぺらぺらめくりながら、教科書どおりに撮っていった感じです」と明かすと、井浦は「そうなんですか!全く王道感がないんですけどね。意外でした」と感心する。
柿本監督は「実は基本に忠実です。いきなり水がやってきたりするシーンなどは奇をてらったと思いますが、極めて映画の歴史にのっとった撮り方です」と舞台裏を明かした。
また、観客からは、原作とは違うエンディングにした理由を問われた柿本監督は「本作に出てくる2人はマイノリティで、社会的弱者です。コロナ禍になるならないは置いといて、生きづらい想いを抱えて生きている人は僕を含めてたくさんいるなと思っていて。だからせめて、映画というステージのなかでは、幸せになってもらいたいと思いました。そのためには原作にある虫の解釈を変えなければいけない点もあったけど、少しでも希望を持ってもらいたいと思って、『すいません、変えさせてください』と言いました」と語った。
2016年の経済産業省によるプロジェクト「SAVE THE ENERGY PROJECT」で、井浦がアンバサダー、柿本監督がビジュアル・ディレクターを務めてから親交を深めてきた2人。
井浦は「柿本監督の1ファンとして、僕自身も監督の作るものには興味を持っていて、いつか仕事をできたらなと思っていました。柿本監督の真骨頂は、普段僕らが目に見えないものを映像として形に表現されることかと。この作品は久々に撮られた長編作品でしたが、監督が『映画を作るぞ!』というすごい熱量を現場で感じたし、完成した作品を観た時も、その想いをくらいました。また、林遣都さんと小松菜奈さんの存在が大きくて、2人を観てるだけで2時間があっという間に過ぎていきます。それくらい惹きつけるお芝居は、この作品でこそ味わえるものだと思います」と、監督と主演の2人を称えた。
柿本監督も最後に「奇しくもいま、こういう時代になりましたが、(林演じる)高坂という主人公はマスクをつけて生活しています。撮影前は本当にこんなキャラクターでいいのかと思いながら撮影していたんですが、最後の撮影が2020年の3月20日で、そこから緊急事態宣言となり、世界が止まってしまいました。ギリギリ撮り終えた作品で、なんか運命じみたものを感じました。いま生きづらいと感じている人たちに少しでも寄り添えたらと」と会場に訴えかけた。
取材・文/山崎伸子