シロさん&ケンジカップルの日々を描く『劇場版「何食べ」』、2人の女性に迫る恐怖を映したスリラー『アンテベラム』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、同性カップルのあたたかな食卓を軸に何気ない日々を描く人気ドラマの劇場版、ジャネール・モネイが1人2役で境遇の全く異なる2人の女性を演じた異色スリラー、ソウルの女王アレサ・フランクリンに隠された苦悩を映しだした伝記ドラマの心が動かされる3本!
ドラマと地続きな展開にとても温かな気持ちに…『劇場版「きのう何食べた?」』(公開中)
深夜ドラマながら異例のブームとなった通称「何食べ」の劇場版。京都旅行から幕を開ける本作はいつもとは様子の違うふたりに最初こそ「あれ、シロさん?ケンジなの?」と久しぶりに会った知人のようによそよそしさを感じてしまうが、それもオープニングまで。見覚えある街で、おなじみのメンバー(+劇場版新キャスト、SixTONES松村北斗)に囲まれ、いつものように、日常の小さなトラブルを美味しい食事で乗り越えながら過ごしていくふたりを見ていると、ドラマと地続きな展開にとても温かな気持ちになってくる。スクリーン版はほんのちょっとだけ、笑いも涙要素も強めで、日々、恋人から家族へとシフトしていくシロさんとケンジに気づけば涙腺がゆるみ気味。「おかえりモネ」で顔をあわせながら、「何食べ」の気配すら感じさせず、話題を呼んだ西島秀俊と内野聖陽カップルは当然、ここでも「モネ」感ゼロ。ふたりもすごいが、個人的にはつんでれ増し増しの磯村勇斗ジルベールに悶絶。(映画ライター・高山亜紀)
社会派要素もはらんだ映像世界…『アンテベラム』(公開中)
主人公は南北戦争時代を思わせるアメリカ南部のプランテーションに囚われ、白人の奴隷にされている黒人女性エデン。そんな彼女の過酷な運命を描く歴史ドラマと思いきや、本作は突然もうひとりの主人公ヴェロニカのパートに飛ぶ。現代を生きるヴェロニカは、女性の権利向上を訴えるリベラル系のベストセラー作家だ。『ドリーム』(16)、『ムーンライト』(16)の実力派女優ジャネール・モネイが一人2役を演じている本作、はたしてエデンとヴェロニカの間にはどのような関係性が隠されているのか?このミステリー・スリラーは中盤のどんでん返しによって2人のヒロインを襲った恐るべき陰謀を明かし、怒濤のサバイバル劇へとなだれ込んでいくのだ。これ以上の説明はネタバレ厳禁。新人監督ユニットが仕掛けたM・ナイト・シャマラン級の奇想天外なトリックに驚愕しつつ、アメリカのいまをえぐる社会派要素もはらんだ映像世界をぜひご覧あれ。(映画ライター・高橋諭治)
パンチの効いたメッセージを投げかける…『リスペクト』(公開中)
“レディ・ソウル”の異名を持つ伝説的なR&Bシンガー、アレサ・フランクリンの伝記ドラマ。教会の家に生まれ、幼い頃から聖歌で歌声を磨き、デビュー後の苦難を経て成功へ。1950~70年代の、そんな半生を追ったドラマはサクセス・ストーリーではあるが、映画が訴えるものはそれにとどまらない。厳格な父による折檻、コミュニティでの性的虐待、夫の暴力など、当時の男性優位の風潮と格闘したアレサの姿を通して、女性の権利についてパンチの効いたメッセージを投げかける。それを下支えするアレサの数々の名曲も魅力。主演を務めたジェニファー・ハドソンの、アレサに引けをとらないパワフルな歌唱も圧倒的だ。目も耳も、そして心も奪われる力作!(映画ライター・有馬楽)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼