『007は二度死ぬ』『キル・ビル』『燃えよNINJA』に「G.I.ジョー」まで…進化を続ける欧米エンタメのニンジャ・ムービー
各国から集結した戦闘プロフェッショナルの活躍を描く「G.I.ジョー」シリーズ最新作『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』が公開中だ。本作は黒装束に身を包んだ寡黙なニンジャ、スネークアイズの誕生秘話。闇の組織・嵐影一門で“三つの試練”を乗り越えたスネークアイズが、忍びの戦士として覚醒する。本作に登場する嵐影一門は、600年前(室町時代)から日本の平和と安定を支えてきたという、忍者をベースにした架空の組織。ミステリアスでオリエンタルな風味を強めた“ニンジャ”と呼ぶべきミステリアスな戦闘部隊は、これまで多くの欧米のエンタメ作品で描かれてきた。
ニンジャが大暴れするアクション映画で、まず名前が挙がるのが『007は二度死ぬ』(67)である。日本を舞台にしたこの作品には、ボンドをサポートする忍びの部隊がプロフェルド率いるスペクターの秘密基地を急襲する姿が描かれた。そのルックスは忍者頭巾にパンツ、機関銃を手にした近代風。ある意味正しい進化を遂げたニンジャと言える。
バイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパー監督作『キラー・エリート』(75)には、謎の殺し屋としてニンジャ軍団が登場。設定上は台湾か中国の組織のようで、まだ忍者は“アジアの謎めいた殺し屋集団”程度の認識だったのかもしれない。しかし黒装束に日本刀や手裏剣を手にした、伝統的なスタイルがそのまま踏襲されているのはうれしい。
1980年には、アメリカで時代劇が一大ブームとなった。戦国時代の日本に漂着したイギリス人を描いたベストセラーのドラマ化「将軍 ショーグン」が放映され、30%を超える平均視聴率を上げたのだ。忍者の暗躍も描かれ、闇に紛れて容赦なく敵を始末するハードな見せ場も盛りこまれた。
そんな1980年に公開された『オクタゴン』は、日本人から武術を習った空手家がニンジャ組織に戦いを挑む物語。『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』(72)で注目され、後にアクションスターとしてブレイクするチャック・ノリスの主演作だ。スパイダーマンよろしく、ニンジャが集団でビルの壁をよじ登る姿はまさに忍び。刀や棒のほか中国武術でおなじみサイを使うなど、なんでもアリな戦法はその後のニンジャ映画の先駆けと言える。
その翌年に公開されたのが、ミスター・ニンジャことショー・コスギの『燃えよNINJA』(81)だ。悪徳実業家に立ち向かうニンジャの活躍を描く低予算映画で、コスギは実業家に雇われた悪のニンジャを熱演。ニンジャたちは、両手を合わせ印を結ぶポーズや刀を抜いてクルリと回す刀さばきのほかにも、吹き矢や煙幕、撒菱(まきびし)などを使ったトリッキーな“術”を次々に披露。闇に紛れて忍び寄るホラー調の味つけや、戦いに破れた者が自ら死を選ぶストイックな姿を含め、ニンジャ映画のスタイルを決定づけた記念碑的な作品だ。
コスギは続く『ニンジャⅡ・修羅ノ章』(83)で、家族を殺されアメリカに渡った日本人役で主演。アクション、スタント大増量の今作は、変わり身の術や隠れ身の術など前作とは違う見せ場が加わった。第3弾『ニンジャ』(84)は、警官に射殺された邪悪なニンジャの悪霊が、女性に取り憑き復讐を果たすホラー風味のファンタジー。コスギは主人公を影ながらサポートする隻眼のニンジャを演じた。左目を鞘の眼帯で覆っているのは、『柳生一族の陰謀』(78)の柳生十兵衛(千葉真一)の影響だろう。
これらコスギ作品の成功で、ニンジャものはアクション映画のサブジャンルとして定着。その流れを汲む『アメリカン忍者』(85)など低予算アクションから、日本を舞台に白昼堂々ニンジャ軍団が大暴れするクリストファー・ランバート、ジョン・ローン、原田芳雄共演の『ハンテッド』(95)まで多彩なニンジャ映画が製作された。