ナチスをテーマにした映画が多く作られる理由とは
世界中を熱狂させたベルリンの壁崩壊から、今年でちょうど20年。ドイツが東西に分断される原因となった第二次世界大戦、とりわけナチスに関する映画は数多い。ナチスにまつわる映画は、なぜ、こんなにも人を惹きつけるのか?
このジャンルは、強制収容所を脱走した経験をもつロマン・ポランスキー監督のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『戦場のピアニスト』(02)など名作揃い。来月12月19日には、実在した2人のレジスタンスの悲劇的な運命を描き見事2008年デンマーク・アカデミー賞5部門に輝いた『誰がため』が公開される。
先日、ベルリンの壁を知らない20歳前後の学生を対象に行われたトークショーで、東京女子大学の芝健介教授(ドイツ現代史)は「ナチ時代の歴史的な知識が共有されなくなっている」と指摘。現在もナチスによる被害を直接体験した人々が生存する一方、ドイツの若者の多くがヒトラーやベルリンの壁を知らないという調査結果が出ているという。
また、国際ジャーナリストの蟹瀬誠一も、ネオナチを取材した経験から「ナチスによる大量虐殺はなかったと信じている若者が沢山いる」と語り、映画を通して事実を知ることの大切さを訴えた。
だからといって、ただ事実を描けば名作になるのかといえば、そうではない。結局、人を感動させるのは事実そのものよりも、そこから浮かび上がる人間の姿だ。あの時代、あらゆる立場の人間が生き残るため本性を剥き出しにした。そういう意味で、ナチズムの時代を映した映画は優れた映画になりやすいのだろう。【映画ライター/安藤智恵子】
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