花澤香菜、アフレコ現場で飛び交う奇妙なディレクションに困惑!?
「この作品がアニメ化すること、そして自分が出演することを聞いたときは、とにかく驚いたと同時に、作品に関われることができて光栄だと思いました」。『夜は短し歩けよ乙女』(公開中)に出演が決まったときの気持ちを興奮気味に振り返る花澤香菜。もともと原作のファンだったという彼女にインタビューすると、ファンならでは裏話をたくさん聞くことができた。
原作は累計発行部数130万部を超える森見登美彦の同名小説。その独自の世界観にのめり込むファンも多いが、花澤もそのひとりだ。さらに、花澤が演じるのはタイトルにもなっている黒髪の“乙女”。「乙女を演じるというのはとても責任重大なことですし、乙女はとても天真爛漫な女の子というイメージが大きかったので、私にできるのかなって…(苦笑)」。作品の肝となる重要なキャラクターだけにプレッシャーも感じていたようだ。
“おもちろい”ことを求め、興味の向くままに夜の京都を彷徨う乙女は、自然と周囲を巻き込んでしまうユニークなキャラクター。物語をリードしていく存在だからこそ、キャラクターづくりは時間をかけて行ったという。
「湯浅(政明)監督の『四畳半神話大系』を見ていたので、抑揚をあまりつけずに早口で話すのかなと思っていたんですけど、早口な乙女っていうのがなかなかイメージしづらくて、その部分で時間がかかりましたね。私の中で乙女は純粋無垢のイメージが強かったので、ほんわかとした喋り方なのかなと思っていたんです」。
持ち前のウィスパーボイスともいえるふわっとした癒し系の声を抑えて、早口な演技を求められたという花澤。そんな彼女が驚いたというのが「武士っぽく!」というアフレコの指示だ。「乙女は武士道を教えられて育ったという背景があったので、武士の要素を押し出したほうがおもしろいんじゃないかという話になって…。とにかくお腹に力を入れて、落ち着いたトーンにしよう、と。現場では『武士っぽく!』というなかなか耳にしない奇妙なディレクションが飛び交ってましたね(笑)」。
そんな苦労の末に完成した本編は、原作を読んでいるときには気付かなかった“新たな魅力”にあふれていると、彼女は嬉々として語ってくれた。「森見さんが小説と湯浅監督がアニメでは、描く登場人物とでは全然違うんです。森見さんのは、どこか身近にいそうだけどちょっとヘンな人。湯浅監督が描くのはとにかくヘンな人(笑)。どっちも『夜は短し歩けよ乙女』なんですけど、異なる魅力があるので合わせて楽しんでみてほしいです!」。
完成した映画のことを語っている時の花澤の顔は「好きなものを広めたい!」という喜びに満ちていた。ここまで彼女を夢中にさせた『夜は短し歩けよ乙女』の世界を、この機会に存分に楽しんでほしい。【取材・文/トライワークス】