「イカゲーム」監督とキャストが語る世界的人気の秘密は?ユニークなテーマ曲の制作秘話も!
「イカゲーム」の唯一無二の世界観を作りあげ、文字通り世界中の視聴者の耳目を集めた立役者、美術監督と音楽監督は韓国からオンラインで参加。美術監督のチェ・ギョンソンは、「韓国で育った私たちにとって懐かしい、子どものころに遊んだいくつかの風景を組み合わせ、ユニークな韓国風ファンタジーを作るために腐心しました」と語る。彼女が描いたビジョンを実現するためにスタッフ間で長時間話し合い、多くのイラストや美術展などを参考にしたそうだ。「通常、準備期間は監督と飲みにいくことが多いのですが、今作に限っては準備に専念しなければなりませんでした。どのセットも制作が大変でしたが、参加者たちの就寝用ベッドと、第6話の横丁のセットがとても難しかったです。この2つのセットは多くの参加者が登場するのでサイズも大きく、特にベッドは456人を収容しなくてはなりませんでした。実際に俳優が使うものなので、安全で、かつリアリティのあるデザインになるよう頭を悩ませました。横丁の景色は1970年代、80年代の写真を参考に、人々にアナログ時代の郷愁を思い起こさせる小道具を集めました。横丁に漂っていたあの時代の空気までも再現したかったんです」。
一方、耳に残る音響とクラシック音楽の組み合わせは、『パラサイト 半地下の家族』でも音楽監督を務めたチョン・ジェイルによるもの。『パラサイト 半地下の家族』の音楽はアメリカでも絶賛され、映画上映に合わせてオーケストラがスコアを演奏する上映会が開かれたほど。チョン・ジェイルは「イカゲーム」の音楽のアイデアを、小学校の音楽の授業から得たと言う。「タンバリン、カスタネット、リコーダー、メロディオンといった子どものころに音楽の授業で演奏した楽器を使いました。オ・ヨンスが演じた老人のオ・イルナムのテーマ曲を作って監督に聴かせたところ、その曲を懐かしい楽器で演奏したものがオープニングの曲になりました」と、あの風変わりなテーマ曲の制作秘話を明かした。ファン・ドンヒョク監督は、「視聴者が最初に耳にする曲なのでとても大事なのですが、彼が作った曲を一度聴いたら忘れられなくなってしまって。しかも、ユニークで独特。それはリスクもあるということですが。ドラマが完成してしばらく経っても、いまだにあのメロディが頭から離れません」と語る。
このような多彩なキャストをまとめあげ、キャストやスタッフの信頼を得ているファン・ドンヒョク監督が“良い撮影現場”を作る秘訣は、「常に撮影を早く終わらせること」で、「早く家に帰してあげること。それがキャスト・スタッフの愛と信頼を得るコツです」だと明かす。だが実際は、「監督として迷っていること、わからないことがあれば、それを認めて、みんなと話し合い、最善の方法を選ぶようにしています。また、過去の経験から得たことも、みんなに共有するようにしてきました。一緒に働く人たちと誠実に向き合い、心を開くことだと思います」だとまとめた。
日本でもまだNetflixデイリーTOP10の上位にランクインしている「イカゲーム」。ちなみに今作は韓国語作品だが、米企業のNetflixが製作費を負担し権利を保持する「Netflixオリジナル」なので、米国の映画・テレビシリーズ賞の審査対象となる。この勢いのまま、アメリカの賞レースでも注目の作品となりそうだ。
文/平井伊都子