GG賞受賞のロザムンド・パイクが語る、『パーフェクト・ケア』の奥深さ「“制約”から自由になることの喜びを」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
GG賞受賞のロザムンド・パイクが語る、『パーフェクト・ケア』の奥深さ「“制約”から自由になることの喜びを」

インタビュー

GG賞受賞のロザムンド・パイクが語る、『パーフェクト・ケア』の奥深さ「“制約”から自由になることの喜びを」

『007/ダイ・アナザー・デイ』(02)で映画デビューを飾り、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』(14)で見せた怪演によって第87回アカデミー賞で主演女優賞にノミネート。一躍トップ女優の仲間入りを果たしたロザムンド・パイクは「これまで読んだなかで、もっとも独創的な脚本だった」と、自身に初のゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)をもたらした最新作『パーフェクト・ケア』(公開中&配信中)で味わった手応えを語っていく。

高齢者から資産をしぼり取る!悪徳後見人のマーラ・グレイソン
高齢者から資産をしぼり取る!悪徳後見人のマーラ・グレイソン[c]2020, BBP I Care A Lot, LLC. All rights reserved.

本作で彼女が演じているのは、“完璧なケア”を行ない裁判所からの信頼も厚い法定後見人のマーラ・グレイソン。実はその正体は、医師やケアホームと結託して高齢者たちから資産をしぼり取る悪徳後見人だった。ある時彼女は、身寄りのない資産家の老女ジェニファーを新たな標的に定める。すべてが順調にいくと思われた矢先、次々とマーラの周りで不穏な出来事が発生。やがてロシアン・マフィアの影もチラつきはじめ、ついにマーラに絶体絶命の危機が訪れることに。

「これこそ私が演じるべきキャラクター。この素材は私のものだと感じました」と、パイクはマーラという役柄と出会うや一瞬で魅了されたことを明かす。「これまで男性ばかりに許されてきたような、残忍で野心的で臆面もなく欲しいものを追い求める。そういうことが許される人物で、私がスクリーンで観たいと思っていた女性そのもの。人には好かれないタイプですが、いつの間にか愛おしくなって、応援したくなってしまいます」。


【写真を見る】共感できないが憧れる!?ロザムンド・パイク演じるマーラの魔性の魅力とは
【写真を見る】共感できないが憧れる!?ロザムンド・パイク演じるマーラの魔性の魅力とは[c]2020, BBP I Care A Lot, LLC. All rights reserved.

メガホンをとったJ・ブレイクソン監督は自ら脚本も手掛けており、この自信家で大胆不敵なマーラという役にパイクが適任であったことを語っている。それにはパイク自身も「マーラも私もとても意志が強く、自分の仕事が好きでリスクや危険を求めている」と、いくつもの共通点を挙げていく。「彼女は時には死さえも恐れず、自分の人生のために戦う。それはヒーローとしてすばらしい意志の強さだと思います。彼女がヒーローか、アンチヒーローかは構わない。私は純粋に、彼女のまっすぐな度胸に憧れを抱きました」。

相棒のフランと共に、次なるターゲットであるジェニファーに接近
相棒のフランと共に、次なるターゲットであるジェニファーに接近[c]2020, BBP I Care A Lot, LLC. All rights reserved.

「この映画のなかには意味のない人物は1人もいない。全員がとても魅力的で独特で、すばらしい配役に魅了されました」とパイクが語るように、本作の見どころの一つはマーラをはじめとした個性の強い登場人物たちと、それを演じる芸達者な俳優たちの化学反応にある。

エイザ・ゴンザレスが演じるフランはマーラの相棒。「マーラはフラン以外の誰にも弱さをさらけ出せない」と、その役柄の重要性を語ったパイクは、「互いに理解し、愛に満ちていながら厳しい関係を築くことができた」と、ゴンザレスとのコンビネーションを振り返る。

またロシアン・マフィアのローマンを演じたピーター・ディンクレイジについては「最高の共犯者だった」と、強い尊敬の念をのぞかせる。「彼と一緒に仕事がしたいとずっと思っていました。とても賢く器用で、カリスマ性があってセクシーでダークなおもしろさを持っている。それらをすべてローマンに注ぎ込んでいました」と、ディンクレイジの魅力が全開であることを保証するパイク。敵対しながらもどこか“似た者同士”な2人の掛け合いには注目だ。

2度のアカデミー賞に輝く大女優ダイアン・ウィーストが謎めいた老女ジェニファー役に
2度のアカデミー賞に輝く大女優ダイアン・ウィーストが謎めいた老女ジェニファー役に[c]2020, BBP I Care A Lot, LLC. All rights reserved.

そしてなんといっても、マーラのターゲットとなるジェニファーを演じる名女優ダイアン・ウィーストの存在を忘れてはならない。『ハンナとその姉妹』(86)と『ブロードウェイと銃弾』(94)で2度のアカデミー賞助演女優賞に輝くウィーストとの共演について、パイクは「一緒に仕事ができる機会がもらえるなんて、本当にうれしいことです」と喜びをあらわにする。「彼女は本物で、おもしろくて魅力的。そして同時に、私にとっては試練でもありました。マーラが勝つように書かれているシーンでも、彼女は簡単に勝たせてはくれない。だからこそ、より楽しむことができました」と、稀代の演技派女優との熾烈な演技合戦に自信をのぞかせていた。

最後にパイクは、「この映画は“愛すべきじゃないもの”を愛する権利を観客に与えている」と、ユニークでありながら奥が深い本作の不思議な魅力を語る。「認めるべきでないと分かっていることにのめり込み、軽蔑すべきことを楽しみ、応援すべきでない人を応援する。マーラの行動で共感できるところなんてなに一つないけれど、好きにならずにはいられません。この映画が皆さんに、“制約”から自由になることの喜びを与えてくれると願っています」。

構成・文/久保田 和馬

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