「COME BACK映画祭」が開幕!深田晃司が名作『戦場のメリークリスマス』の魅力を熱弁
池袋のMixalive TOKYO地下2階にあるHall Mixaで12月4日よりスタートした「COME BACK映画祭-コロナ禍で影響を受けた映画たち-」において、大島渚監督の代表作の一本で今年4K修復版としてリバイバルが行われた『戦場のメリークリスマス』が上映。上映終了後のトークショーに映画監督の深田晃司とライターの児玉美月が登壇し、同作をはじめとした大島渚作品との思い出やその演出の魅力について語り合った。
この「COME BACK映画祭-コロナ禍で影響を受けた映画たち-」は、昨年来よりつづくコロナ禍によって上映が中止・中断された作品や映画館の座席制限・営業時間の短縮によって充分な配給・興行ができなかった作品などを集めて再上映する映画祭。『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(21)などの話題作や、第93回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した『ファーザー』(20)など、大作からミニシアター作品、実写、アニメーションまで59本の幅広い作品がラインナップされている。
今年4月16日に全国9館で公開されたものの、緊急事態宣言の再発令を受けて東京都内と大阪府の上映劇場が休館を余儀なくされた『戦場のメリークリスマス 4K修復版』。物語の舞台は1942年のジャワ島。日本軍の俘虜収容所で起きた事件を機に、イギリス人俘虜のロレンスは粗暴な日本人軍曹のハラと事件処理に奔走する。一方でハラの上官で、規律を厳格に守る収容所所長で陸軍大尉のヨノイは、連行されてきた反抗的で美しいセリアズに心を奪われてしまう。
「20年ぶりに観ても大きく印象が変わる感じはなかった」(深田)
児玉「本日の対談の経緯は、春に『戦場のメリークリスマス』と『愛のコリーダ』がリバイバル上映された際に発売された『キネマ旬報』の大島渚特集で、私が『戦場のメリークリスマス』について寄稿し、深田監督が『愛のコリーダ』について寄稿されておりました。それを基にしてお話しできたらおもしろいかなと思ってお声を掛けさせていただきました。深田監督は観客の皆さんと『戦場のメリークリスマス』を観終わったばかりとのことで、まずは感想をお聞きしてもいいですか?」
深田「この映画を観るのは20年以上ぶりだと思います。やはり色々と忘れているシーンも多く、かえって新鮮な気分でした。当時、大島監督の作品のなかでもすごく観やすくておもしろかったという印象を持ったことを思い出しました。自分が一番好きな大島作品は『日本春歌考』なのですが、それが観やすいかと言ったら決してそんなことはなく…。大島監督の現代劇は非日常感が強く、戦後日本が抱える違和感を大島監督自身も抱えていて、それが描かれているという印象があります。
日常を背景にしながら非日常で、その時代を経験していない自分が観るといつもレイヤーが挟まってくる。戦後の中でも戦前の記憶がもろに入っていますし。それだけに、この『戦場のメリークリスマス』の場合はジャワ島を舞台にしながらインドネシア人がまったく出てこないという非日常感で、登場人物すべてが非日常を生きているという状況が見受けられます。なので、その距離感が自分の観やすさに繋がっているのだろうと思いながら観ていました」
児玉「『愛のコリーダ』についての寄稿で、初見の頃と印象が違ったと書かれておりましたが、『戦場のメリークリスマス』の場合は初見時といま改めて観たことで大きく変わった部分がありましたか?」
深田「俘虜収容所の空間のとらえ方がキマっていてかっこいいなと思いながら観ていたのですが、それは初見時の印象と近いものがあります。『愛のコリーダ』と比較すると『戦場のメリークリスマス』は、20年ぶりに観てもそれほど大きく印象が変わる感じはありませんでした。『愛のコリーダ』では男女の性愛が描かれていますが、私自身この10年や20年の間で映画業界に関わるようになり、映画業界がものすごくホモソーシャルな男性社会であると実感してきました。
そしてそのホモソーシャルのなかで描かれる男女の性愛というものに実はバイアスがあるのだと知ったことで、『愛のコリーダ』を観る上でその点と向き合わざるを得なかったわけです。『戦場のメリークリスマス』ではそもそも軍隊というホモソーシャルな環境を舞台にしたせいか、そういった印象は少なかったです。児玉さんはキネマ旬報ですごくおもしろい視点で書かれていましたが、どういう切り口で『戦場のメリークリスマス』をご覧になったのでしょうか?」
児玉「私が『戦場のメリークリスマス』を最初に観たのが20代後半の頃で、その時は結構難しく、なにが描かれているのかあまりよくわからなかったんです。でもいま深田監督からホモソーシャルという言葉が出たように、男性同性愛の視点から観直し、分析した時に、軍隊のようなホモソーシャルな男性社会を揺るがすために比喩的に男性同性愛を描いていたんだなと見えました。
遺作となった『御法度』でも新選組という男性社会における男性同性愛を描いていましたが、そこでも同じことをされている。どれだけホモソーシャルな空間が脆弱であるかを描いていると思い、その視点で見ると非常におもしろく感じました。『御法度』は公開された当時、男性同性愛者的な主人公がモンスターとして描かれていて、最終的に退治されてしまうのが同性愛嫌悪だと批判されていましたが、いま改めて観た時に別の角度から、新たな可能性を見出したいなと思って書いたのがキネマ旬報の寄稿でした」
深田「自分も『御法度』を公開当時に観ました。あの映画では松田龍平さんが組織の秩序を乱す者として描かれていて、『戦場のメリークリスマス』では坂本龍一さんがそれによって人間的な変化をもたらされていく。必ずしもそれがネガティブな変化ではないと描かれていたように思いました」
■開催期間 2021年12月4日~2021年12月19日(日)
■開催会場 Hall Mixa(Mixalive TOKYO地下2階)
■会場席数 144席
■販売価格 全作品700円(税込)/全席自由席
■販売場所
【インターネット】ローチケWEB https://l-tike.com/comeback-movie-festival
【コンビニ】ローソン・ミニストップ店舗内のLoppi
【当日券】各回20 枚限定/各公演開場時刻より、会場Hall Mixa 受付にて販売
※当日券は諸般の事情により販売しない場合がございます。ご了承ください。
※未就学児のお客様はご入場できません。ご了承ください。
【公式サイトTOP】 https://comeback-movie-festival.jp