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「COME BACK映画祭」が開幕!深田晃司が名作『戦場のメリークリスマス』の魅力を熱弁

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「COME BACK映画祭」が開幕!深田晃司が名作『戦場のメリークリスマス』の魅力を熱弁

「神懸かった偶然を起こせるのも監督の才能のひとつ」(児玉)

会期初日の『戦場のメリークリスマス』上映後に、深田晃司監督と児玉美月がトークを展開
会期初日の『戦場のメリークリスマス』上映後に、深田晃司監督と児玉美月がトークを展開

児玉「ラストショットはどのように感じましたか?あれは何回観てもすごいですよね」

深田「色々な意味で、大島監督の映画監督としての勇気のようなものを感じました。この題材自体が勇気あるものですし、原作ではどのように描かれているかわからないのですが、日本人の監督がイギリス人の回想を描くのって難しいはずなんですよね。馴染みのない社会について、ああいうかたちで描くのは非常にハードルが高い」

児玉「そうですね。大島は朝鮮人の難しい問題にも挑戦してましたしね」

深田「撮影に関しては、被写体との距離感がものすごく丁寧に測られていて、最後の最後で急にビートたけしさんの寄りで終わる。距離感狂ってると感じさせることもねらいだと思うんですが、かなり勇気あるなと思いますね。この映画で最も寄りになる瞬間をラストショットに持ってくるという。あとキャスティングも勇気がありますよね。坂本龍一さんとたけしさんを難しい役でキャスティングして、早口で聞き取れない部分もありますが、あらゆる要素がはまっている映画なので、演出家としての決断力と勇気はすごいなと思います」

児玉「演出家として計算されている部分もあるのでしょうが、坂本龍一とデヴィッド・ボウイのキスシーンでカメラが揺れるのが偶然の事故だったと聞いて、計算されたところと偶発性が合わさって作家性になってる。以前深田監督と『本気のしるし』のトークショーでお話しした時に、『この演出はどうだったんですか?』と訊ねたら深田監督は『あれは偶然です』とおっしゃっていましたが、そういった神懸かった偶然を起こせるのも監督の才能のひとつと感じました」


深田「そう言っていただけてありがたいです。ただ映画監督として思うことは、どれだけカメラが映画に豊かな偶然を呼び込めるかを意識していて、完璧主義の監督の作品ほどそういう要素が減ってしまう。頭の中のイメージがアウトプットされていて、それがおもしろいからファンがいるわけですけど、それゆえ限界のようなものがある気がしているのです。例えばスタンリー・キューブリックや黒澤明の後期の作品、最近だとウェス・アンダーソンとか。イメージ通りにきちんと世界観をアウトプットしていくゆえの窮屈さですね。

本当は私たちが生きる社会は豊かな偶然に満ちている。偶然とは、自分ではコントロールし得ないなにかですよね。そういったものに満ちてるはずだけど、あまりにもコントロールされている。大島監督の場合は強烈な世界観があって一見すると完璧主義のようで、どこか隙間風だらけなんですよね。ものすごく完璧主義の監督だったら、坂本龍一さんとビートたけしさんをあの頃キャスティングすることはなかったと思います。それはどこかで豊かな偶然を呼び込むため、それを許容するための土台があったからだと思っています」

【写真を見る】コロナ禍で影響を受けた59作品を一挙に再上映!監督をはじめ、豪華ゲスト登壇のトークショーも
【写真を見る】コロナ禍で影響を受けた59作品を一挙に再上映!監督をはじめ、豪華ゲスト登壇のトークショーも[c]和月伸宏/集英社 [c]2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会

「COME BACK映画祭-コロナ禍で影響を受けた映画たち-」では、各日テーマにそったバラエティ豊かな作品が上映されていくほか、ゲストを招いたトークイベントも予定されている。12月5日の『DIVOC-12』の上映後には同作の1編を手掛けた上田慎一郎監督が、12月14日(火)の『るろうに剣心 最終章 The Beginning/The Final』の上映後には大友啓史監督が登壇。ここでしか聞くことができない貴重な裏話が飛びだすことだろう。

是非ともこの機会に見逃してしまった作品と出会い、スクリーンで映画を観る楽しさを改めて味わってみてはいかがだろうか。「COME BACK映画祭-コロナ禍で影響を受けた映画たち-」は12月19日(日)まで開催される。詳しい上映作品やスケジュールは、公式サイトでチェックしてほしい。

取材・文/久保田 和馬

【COME BACK映画祭-コロナ禍で影響を受けた映画たち-】
■開催期間  2021年12月4日~2021年12月19日(日)
■開催会場  Hall Mixa(Mixalive TOKYO地下2階)
■会場席数  144席
■販売価格  全作品700円(税込)/全席自由席
■販売場所 
【インターネット】ローチケWEB https://l-tike.com/comeback-movie-festival
【コンビニ】ローソン・ミニストップ店舗内のLoppi
【当日券】各回20 枚限定/各公演開場時刻より、会場Hall Mixa 受付にて販売
※当日券は諸般の事情により販売しない場合がございます。ご了承ください。
※未就学児のお客様はご入場できません。ご了承ください。

【公式サイトTOP】 https://comeback-movie-festival.jp

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