『カメ止め』フランスリメイクがプレミア上映!2022年サンダンス映画祭のラインナップ発表
ハリウッドでは賞レースが本格的に始まったばかりだが、インディペンデント映画の世界では、2022年以降の映画界をにぎわせそうな作品が動き始めている。2022年1月20日から30日までユタ州パークシティで行われるサンダンス映画祭のラインナップが発表になり、プレミア部門では上田慎一郎監督の劇場長編デビュー作で、口コミから大ヒットを記録した『カメラを止めるな!』(17)のフランス語リメイク作品のワールドプレミア上映が行われる。
2022年のサンダンス映画祭で上映される長編映画は82本。世界中から3762本の応募があり、うちアメリカ国内は1665本、海外が2121本。長編映画82本のうち、43本は女性もしくは女性を含むグループによる監督作で、42本は初監督作品だという。1月に行われたサンダンス映画祭でUSドラマ部門の観客賞、審査員賞、監督賞、アンサンブルキャスト賞を受賞したシアン・ヘダー監督の『コーダ あいのうた』(2022年1月22日公開)や、レベッカ・ホールの初監督作でNetflixがピックアップした『PASSING -白い黒人-』(21)は、今年の各賞で監督賞や俳優賞などにノミネートされている。
各賞の長編ドキュメンタリー部門有力候補と言われるアミール・“クエストラブ”・トンプソン監督の『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』(公開中)は、USドキュメンタリー部門の観客賞と審査員賞を受賞している。本作は、ウッドストックと同年の1969年に、NYのハーレムで開催された音楽フェスを紐解くドキュメンタリー。ワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門の審査員賞を受賞した『Flee』(21)は、アフガニスタンからデンマークに亡命した青年の“二重の逃避行”をアニメーションで描いた作品で、第94回アカデミー賞長編アニメーション賞、国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の3部門でのノミネートが期待されている。例年、アカデミー賞のノミネーション発表直後に行われるサンダンス映画祭は、次の年の話題作や期待作を占う映画祭となっている。
2022年のサンダンス映画祭における期待作の筆頭に挙がっているのが、『アーティスト』(11)で第84回アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞など5部門を受賞したミシェル・アザナヴィシウス監督による『カメラを止めるな!』のフランス語リメイク『Final Cut』。『ムード・インディゴ うたかたの日々』(13)や『ゲティ家の身代金』(17)のロマン・デュリスが、オリジナル版で濱津隆之が演じた監督役を演じる。公開されたスチール写真からは、アロハシャツを着た監督とスタッフが血糊をつけて映画制作に勤しむ姿が確認できる。
そのほか、ドラマシリーズ「GIRLS/ガールズ」のクリエイター、レナ・ダナムの『タイニー・ファニチャー』(10)以来の長編映画監督作『Sharp Stick』や、『ソーシャル・ネットワーク』(10)のジェシー・アイゼンバーグが監督と脚本を手掛けたデビュー作『When You Finish Saving the World』(22)も上映される。今作にはエマ・ストーンもプロデューサーに名を連ね、ジュリアン・ムーアが主演。また、アーロン・ソーキンが監督と脚本を務めた最新作『Being the Ricardos』(21)と同じ、アメリカの国民的人気番組「アイ・ラブ・ルーシー」のルシル・ボールと夫のデシ・アーナズを題材にしたドキュメンタリー『Lucy and Desi』(22)を、エイミー・ポーラーがドキュメンタリー初監督している。ドキュメンタリーの目玉作品には、「イェ(Ye)」と改名したカニエ・ウエストの21年間を追ったドキュメンタリー3部作『jeen-yuhs: A Kanye Trilogy』もプレミア上映される。このドキュメンタリーは、すでにNetflixが3000万ドル(約34億円)で配信権を購入済みと報道されている。
サンダンス映画祭は、1978年にロバート・レッドフォードがスキーリゾートのユタ州にクリエイターたちを惹きつけるために創設。以降、ジム・ジャームッシュやスティーブン・ソダーバーグ、クエンティン・タランティーノ、コーエン兄弟らがここから羽ばたき、デイミアン・チャゼル、ライアン・クーグラー、ルル・ワンといった映画界の未来を担う才能を発掘してきた。今年と同様に、パークシティでのフィジカル上映と、アメリカからアクセス可能なオンライン上映で行われ、観客賞など各賞が選出される。
文/平井伊都子