マシュー・ヴォーン節炸裂の過激な演出に史実を基にしたストーリー…『キングスマン:ファースト・エージェント』を楽しむ3つのポイント
POINT 2:実在の人物や事件も登場!史実にフィクションを織り交ぜた斬新なストーリー
2つ目の注目ポイントは、歴史上の事実をフィクションのなかに取り込んでいること。ロシアの怪僧ラスプーチンや、のちにヒトラーのメンタリストとなるドイツの魔術師ハヌッセン、オランダ生まれの妖艶な女スパイ、マタ・ハリなどの、実在した悪名高き人物を狂団の一員に配置し、手強いヴィランとして、それぞれに奇想天外な暗躍を設定しているのがおもしろい。この部分に関しては史実からの逸脱はあるものの、クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(09)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)がそうであったように、映画ならではの振り切れ具合を楽しんでほしいところ。
また、時の英国王ジョージ5世と、ロシア皇帝ニコライ2世、彼らと戦うことになるドイツ皇帝ヴィルヘルム2世は映画で描かれているとおり、史実でも従兄弟同士だった。オーストリア大公フランツ・フェルディナントが暗殺され、第一次世界大戦の発端となったサラエボ事件も、オックスフォード公ら劇中のキャラが絡むこと以外は、史実が再現されている。
第一次世界大戦が勃発し、イギリスとロシア、ドイツ、それにアメリカらの国々が互いに牽制し合うなか、水面下で立ち回るオックスフォード公と仲間たち。「もしかすると、本当にこんなことがあったかも!」と思わせてくれる、史実に即したストーリーと、ケレン味あふれる展開や超過激なアクションとのバランスが絶妙なのだ。
POINT 3:レイフ・ファインズにハリス・ディキンソン、ダニエル・ブリュールも!演技派たちの競演に酔いしれる
3つ目に挙げたいのは、英国スターの豪華な競演だ。主人公であり、初代キングスマンとなるオックスフォード公に扮するレイフ・ファインズは、『シンドラーのリスト』(93)と『イングリッシュ・ペイシェント』(96)でそれぞれ米アカデミー賞の助演男優賞と主演男優賞にノミネートされ、「ハリー・ポッター」シリーズでは闇の帝王、ヴォルデモート役を演じて強烈な印象を残した名優。近年では、『007 スカイフォール』(12)の終盤でシリーズの司令塔Mを引き継いだことでもよく知られているが、本作ではジェームズ・ボンド顔負けの体を張った熱演を見せるのだから、見逃すわけにはいかない。
彼の息子、コンラッドに扮する『マレフィセント2』(19)の王子役で人気のハリス・ディキンソンが体現する正義感の強いキャラクターも光る。このほか、負けん気の強い使用人役で登場するジェマ・アータートン、戦闘に長ける執事役のジャイモン・フンスー、魔術を駆使してコサックダンスを踊るかのように格闘するラスプーチンをハイテンションで演じたリス・エヴァンスらが出演。さらに、個性が際立つイギリスの演技派俳優陣に加え、ドイツから『グッバイ、レーニン!』(03)で世界的な俳優となったダニエル・ブリュールがハヌッセン役で参加するなど、とにかくゴージャスな顔ぶれに。セリフの間合いや動きのタイミングを心得た、彼らの息の合った共演だけでも目を奪われるに違いない。
過去に目を向け、歴史とリンクさせたことで、「キングスマン」の世界はさらに広がっていく。いかにして、世界を救うジェントルな最強スパイは誕生したのか?そして、彼らはどのようにして世界大戦の終結に挑むのか?“キングスマン”の最初の大仕事を、手に汗握りながら見守るべし!
文/有馬楽