「日本ホラー映画大賞」審査会に独占潜入!清水崇、堀未央奈らが“新たな才能”発掘に徹底論戦
12月某日、都内の会議室に集まったのは「呪怨」シリーズなどで知られる清水崇監督、映像クリエイターのFROGMAN、乃木坂46の元メンバーで女優の堀未央奈、Base Ball Bearの小出祐介、そして映画ジャーナリストの宇野維正の5名。彼らが集まった理由はほかでもない、来る12月26日(日)に授賞式が行われる「日本ホラー映画大賞」の受賞作品を決めるためだ。MOVIE WALKER PRESSでは、その審査会に独占潜入。約3時間におよんだ審査の様子をレポートしていきたい。
「リング」シリーズなど数多くのホラー映画を世に送りだしてきたKADOKAWAが主催する「日本ホラー映画大賞」は、日本初のホラー専門フィルムコンペティション。大賞受賞者には受賞作品のリメイク版か完全オリジナルの新作映画の監督として、2022年の商業映画監督デビューを確約。またアニメ部門賞も設置されるなど、ホラー映画界に新たな風を吹かせる才能の発掘と支援を行なっていく予定となっている。
この審査会で選ばれるのは「大賞」と「審査員特別賞」の2作品。104本もの応募作品のなかから、一次選考を通過した作品を事前に鑑賞してきた審査員の面々は、映画としての純粋な完成度の高さやホラー映画に不可欠な恐怖描写の巧拙、またそれぞれがホラー映画の次世代に求めているものなどを基準に、感嘆した作品や妙に気になるところのあった作品を順番に挙げていく。審査委員長を務める清水監督は、かなり厳選した結果ということで5作をピックアップし、ほかの審査員らも続いて5作前後のセレクトを発表する。全員の票が出揃ったあとには、早い段階で議論の方向がまとまり、複数の審査員が選んだ作品や、それぞれが激推しする作品などが残され、8作に絞り込まれた。
当初2時間以内を予定していた審査会。これは意外と早く終わるのかと思いきや、ここから議論は白熱していく。大賞受賞作品の監督には、その作品のリメイク版かオリジナル新作を手掛けてもらうという当コンペティションの趣旨に合わせ、短編の応募作品を長編化した際のイメージを膨らませていく審査員たち。さらに会議室のモニターに応募作品を映しだしながら、一つ一つのショットごとに作り手の意図を分析していき、ようやく3作品まで絞り込むと、今度はそれぞれの監督の将来性にまでじっくりと想像をめぐらす。
いざ決選投票に持ち込まれるタイミングで、残った作品を強く推す審査員に対し、ほかの審査員から「具体的にどこが良かったのでしょうか?」と直球の質問が飛びだす一幕も見受けられ、熟考の末さらに2作品へと絞り込まれる。そして開始から3時間を迎えようとした頃、ついに決選投票によって大賞が決定。惜しくも大賞を逃した作品には、審査員特別賞が贈られることが満場一致で決定した。
予定を大幅に上回る長丁場となった審査会を終えた堀は、自身もホラーファンとして、個性的な作品が多く、鑑賞していて応募作の充実ぶりを実感できたと笑顔で振り返る。またFROGMAN、小出、宇野らもそれぞれ、力作揃いとなった応募作品に脱帽した様子を見せ、早くも「第2回」への期待を寄せていた。12月26日(日)にEJアニメシアター新宿で行われる授賞式では、大賞、審査員特別賞をはじめ、計8部門の受賞作品の発表と上映のほか、審査員5名による講評の時間も用意されており、どんなコメントが飛びだすのか大いに注目だ。
また授賞式の翌日からは同会場にて「3夜連続名作ホラー上映&トークイベント」も実施。12月27日(月)には『回路』(01)の上映と黒沢清監督のトークが、12月28日(火)には『女優霊』(96)の上映と脚本家の高橋洋のトーク。そして12月29日(水)には『呪怨』(00)の上映に加え、清水監督と伽耶子役の藤貴子のトークが実現。ご都合の合う方はぜひ会場に足を運び、日本のホラー映画界を盛り上げる新たな才能の息吹と、その礎を築いた先人たちの貴重な秘話を存分に堪能してほしい。
取材・文/久保田 和馬