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竹内涼真が考える“生きていくこと”とは?「相手を思い遣ったり、自分が信じているものに対して一直線に答えを求めてもがくこと」

インタビュー

竹内涼真が考える“生きていくこと”とは?「相手を思い遣ったり、自分が信じているものに対して一直線に答えを求めてもがくこと」

「『抗ってもがくということが、生きるということではないのか』というセリフは、最も気持ちが高まった」

ホッサルに声を当てていく作業については、「CGも画もでき上がっていない場面が少なくなかったので、絵コンテを見ながら想像し、監督たちとイメージをすり合わせていく必要がありました。すごく頭を使いましたし、気持ちや集中が途切れないように、テンションを下げないようにと臨みました。だから、ものすごく疲れましたね」と大きく息をついた。「僕にはボリュームや圧などの声のテクニックがないので、内側の気持ちから作っていかないとやり切れなかった。プロの声優さんたちって、まるで精密な楽器のようだと思いました。本当にすごい!」と改めて感じ入った様子で感嘆する。

「気持ちや集中が途切れないように、テンションを下げないよう臨みました」とアフレコを振り返る竹内
「気持ちや集中が途切れないように、テンションを下げないよう臨みました」とアフレコを振り返る竹内撮影=野崎航正

集中して臨んだ竹内が、特に想い入れのあったというのが「終盤、ホッサルのきれいで美しい話し方が、崩れる瞬間があるんです」と語るシーン。「傷だらけのヴァンがそれでも道を進もうとする時、『お前の道についていく代わりに…』と言いだすあたりから、ホッサルのテンションが1つ上がっていくんです。そして最後、予告編にも使われていますが、『抗ってもがくということが、生きるということではないのか』というセリフは、物語もですが、最も気持ちが高まりました」と教えてくれた。

完成した作品を観た竹内は、その魅力を「キャラクターもしかり、画にすごく温かみがあって、CGの色味も魅力的。色づかいやテイストが『鹿の王』の世界観にとてもよくマッチした、美しい作品だと思いました。飛鹿(ピュイカ)という人が乗ることのできる動物(鹿)がすごくかわいいし、草むらで泥だらけになって遊んでいたころの懐かしさを覚えるような、自然の描き方がとてもステキなんです」と語る。

そんな竹内が最も気に入っていたのは、「ヴァンが連れていたユナという女の子。もうメチャクチャかわいくて」と相好を崩す。「前歯がないところも、切りすぎた前髪も、鼻水を垂らしているところも、この頬っぺたも吸いたくなるくらいかわいい(笑)!人見知りしない感じが最高なんですよ」と、子ども好きな一面をのぞかせる。

  竹内もそのかわいらしさを絶賛する、ヴァンと旅する少女ユナ
竹内もそのかわいらしさを絶賛する、ヴァンと旅する少女ユナ[C]2021 『鹿の王』製作委員会

「小さなころによく観ていたアニメの雰囲気が舞い戻ってきた感じがした」

さらに「ユナだけでなく、ひとりひとりのキャラクターがすごく素朴で、なにを求めているのか明確に伝わってくる。僕が知っているアニメの王道だと思いました。監督が、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』などの作品に携わって来られている方なので」と続ける。

竹内にとって“アニメの王道”とは、「僕が子どものころ、スタジオジブリの作品が爆発的に人気になりました。僕も『となりのトトロ』をはじめ、ジブリ作品を何度観に行ったことか…」と明かす。本作は、そうしたジブリ作品を髣髴とさせるそうだ。「太陽の輝き、木々や草の緑、動物たちも。小さなころによく観ていたアニメの雰囲気が舞い戻って来た感じがしました。デジタルすぎない演出で敢えて作っているところが、すごくいい味になっている。でも同時に、十数年前なら出せなかったであろう、太陽の色味や目の輝きなど、ちゃんと進化している部分も感じさせるのがすごいです」。


竹内がスタジオジブリの作品を彷彿させたという、劇中の大自然の描写は美しい
竹内がスタジオジブリの作品を彷彿させたという、劇中の大自然の描写は美しい[C]2021 『鹿の王』製作委員会

最後に竹内は、「いまのコロナ禍の世界と本作を重ねようとすれば、なんでもリンクしてしまいますが」と牽制したうえで、観客へのメッセージを贈った。「最近、“生きていくこと”という言葉をよく聞きますが、それってシンプルに、相手のことを思い遣ったり、自分が信じているものに対して一直線に答えを求めてもがくことだったりするのではないかな、と思うんです。この『鹿の王』でも、一度原点に返ることで答えが見えてくる。いまだからではなく、普遍的なメッセージを感じてもらえたら嬉しいです」。

取材・文/折田千鶴子


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