「神木隆之介の撮休」で自分役を演じた神木隆之介。「本当の僕は、ただのおふざけ野郎です(笑)」
「俳優業は、まったくもって安心できる場所ではない」
――劇中のとある回では、俳優業に対して「人気って水物」という台詞もありました。あの一連の台詞は俳優をやっている方にとってはリアリティのあるものに感じられましたが、いかがでしたか。
「実感はありますね。時代はどんどん進んでいきますし、若い子や新人の子たちも次々と出てきますし。本当にいろんなことに左右される職業ではあるなというのはすごく感じます。お芝居って数値で能力を示せるわけでもないし、成績が出るわけでもない。芸術の世界なので、価値を決めるのは自分ではなく周りの人たち。まったくもって安心できる場所ではないなと」
――その世界で四半世紀にわたって活躍されてきました。
「そこはもう周りの手助けが大きかったと思いますよ。僕は目の前にある仕事を一生懸命頑張るっていう、ただそれだけで。周りのマネージャーさんとかが、次はどういうお仕事をさせるかとか、どういう印象をつけるかとか、そういうことを一生懸命考えてくれていた。僕よりも周りの人たちの方が大変だったと思いますね」
――改めてですが、そんな神木さんが本作のオファーを受けた一番の理由はなんだったんでしょう。
「斬新だったからです。台本の役名のところに自分の名前が載るなんて、まずないので。しかも監督や作家さんの想像の中で、僕という人間をつくり上げていくシステムが新しいなと感じたし、おもしろいなと思った。それでぜひやりたいですとお伝えしました」
――神木さんのお仕事選びの基準はなんでしょうか。
「もちろんその時のスケジュールや環境にもよりますが、大切にしているのは『楽しそうかどうか』です。なにをするにしても、まず自分がワクワクしないといけないので。そこに心躍るものはあるか、自分の直感はすごく大事にしています」
「『桐島〜』をやりながら自分のこれからを考えた」
――今回はいろんな監督とタッグを組みました。監督それぞれの違いで印象的だったことはありますか。
「ガキさん(森ガキ侑大)は一連(カットをかけずに長回しで撮影すること)が多かったですね。おかげドキュメンタリーチックというか、臨場感があって、一緒に体験してるような感覚を味わえる作品になっていると思います。一連って演じる側も緊張感があって楽しいんですよ。細かく止めないぶん、その時にしか生まれない間とかリアクションが生まれるところが、一連で演じるおもしろさですね」
――これまでもいろんな映画監督とタッグを組んできましたが、もう一度一緒にやりたい監督というと、誰が浮かびますか。
「いままで本当に素晴らしい監督さんとご一緒させていただいたので、悩みますが…まずは大友(啓史)さんですね。大友さんは何回も本番をやるけど、テイクごとに気にせず違うことやっていいからねとおっしゃる監督で。そうやって自由にやらせてもらえるところが好きです。
あとは三池(崇史)さんも。三池さんの現場は細かくカットを割るぶん、瞬発力が要求されます。なにより三池さんは小さいころから僕のことを知ってくださっているので、親戚みたいというか、一緒にいて安心なんです。
佐藤(祐市)さんともまたご一緒したいなあ。佐藤さんは、現場の士気を最上級まで盛り上げてくださる方。だけど、シリアスな場面ではしっかりと意志を伝えてくださるので、現場が楽しいんです」
――たくさんの映画に出演してきましたが、映画作品で転機の1本といえば。
「映画『桐島、部活やめるってよ』ですね。撮影中はまだ高校生で、この先どうやって生きていくんだろうみたいな葛藤があって。高校生の時ってまだギリギリ夢を追えるんですよね。だけど卒業したら、だだっ広いところに放り出されて、そのなかでちゃんと自分の道を見つけていかなきゃいけない。『君はこれから大海原に出るんだけど、本当に大丈夫か』ってあの作品に言われたような気がして。そんなメッセージをまさか自分の出演作から受け取ると思っていなかったので衝撃を受けたし、自分のこれからを考えさせられた。そういう意味でも忘れられない転機の1本です」
取材・文/横川良明
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