100年語り継がれる不朽の純愛物語、『シラノ』が現代にも通じる理由とは?

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100年語り継がれる不朽の純愛物語、『シラノ』が現代にも通じる理由とは?

「ゲーム・オブ・スローンズ」や『スリー・ビルボード』(17)のピーター・ディンクレイジを主演に迎え、名作戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」をジョー・ライト監督が壮大なスケールで再構築したミュージカル映画『シラノ』が2月25日(金)より公開。これまで様々なかたちで語り継がれてきたこの純愛物語は、なぜ世界中で愛されつづけるのか。そして本作ではどのように“再構築”されているのか。その魅力を紐解いていきたい。

物語の舞台は17世紀のフランス。剣の腕前だけでなく優れた詩を書く才能をもつフランス軍きっての騎士シラノは、仲間たちからも絶大な信頼を置かれていたが、自分の外見に自信を持てず、ロクサーヌに想いを伝えることができずにいた。シラノの胸の内を知らないロクサーヌは、シラノと同じ隊に配属されたクリスチャンに惹かれ、シラノに恋の仲立ちを依頼。複雑な気持ちを抱えながら、愛する人の願いを叶えようとするシラノは、クリスチャンに代わってロクサーヌへ恋文をしたためることに…。


ピーター・ディンクレイジとヘイリー・ベネットを舞台版に続いてキャスティング!
ピーター・ディンクレイジとヘイリー・ベネットを舞台版に続いてキャスティング![c] 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

エドモン・ロスタンが手掛けた戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」は、フランスで初演されて以来100年以上にわたり世界各国で上演されつづけてきた。また1900年には初めて映画化され、以後フランスやアメリカはもちろん日本でも映画化されたことも。そんな永久不変の名作をこれまでにない新たなかたちに生まれ変わらせたのは、ディンクレイジの妻でもある舞台監督のエリカ・シュミット。従来受け継がれてきた“シラノの鼻が並外れて大きい”という設定を変更し2018年に上演された“エリカ・シュミット版「シラノ」”に大いに魅了されたライト監督は、映画化を決意したという。

「ほかの『シラノ』作品では、役者がどんなに説得力のある演技をしても結局は楽屋に戻ってメイクの椅子に座り、あの大きな鼻を取り外すんだろうと感じる部分があった。でもピーターはシラノに内から湧きでる真実と嘘のなさを与えていて、それに深く感銘を受けたのです」。そしてライト監督は映画化が決まると、シュミットに脚本を依頼。またシラノ役のディンクレイジと、ヒロインのロクサーヌ役のヘイリー・ベネットを舞台版に引き続きキャスティングする。

舞台版でのシラノに続き、ロクサーヌとクリスチャンの設定も変更されている
舞台版でのシラノに続き、ロクサーヌとクリスチャンの設定も変更されている[c] 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

ロクサーヌとクリスチャンにも新たな設定が加えられた。ロクサーヌは“美しい手紙で求愛されたい”といった典型的な時代物に登場する女性像ではなく、主体性を持った現代的な女性として描かれ、クリスチャンは「愚かではなく、無垢で悪質のない人物」とライト監督が説明するように、恋心を寄せる相手を前にするとうまく話せないシャイな青年として描かれている。それでも基本的な物語はこれまでの「シラノ・ド・ベルジュラック」と変わらない。ディンクレイジは「物語のなかで行われる手紙のやり取りは、いまの時代のメールと基本的になんら変わらないものです」と、その普遍性を語る。

「現代は誰もがシラノであり、インターネットやマッチングアプリでありのままの自分を表現したいと思っている。でも実際に会ってみると落胆したり、オンライン上で知りすぎてしまって新たな発見がなかったりする。現代とこの作品はそんなふうに重なる部分があって、それが100年以上経ってもこの作品が存在しつづけている理由だと思います。それに現代と通じる部分があるのは、これが愛と喪失を扱った作品だからでもあります。10代からずっと上の年代まで、誰もが理解できることでしょう」。

【写真を見る】「GOT」俳優ピーター・ディンクレイジが体現する、新たな「シラノ・ド・ベルジュラック」に涙…
【写真を見る】「GOT」俳優ピーター・ディンクレイジが体現する、新たな「シラノ・ド・ベルジュラック」に涙…[c] 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

先日ノミネーションが発表された第94回アカデミー賞では衣装デザイン賞にノミネート。また英国アカデミー賞では英国作品賞をはじめ4部門にノミネートされるなど高い評価を集めている本作。切なすぎる三角関係を描く不朽のロマンスが、どのように現代によみがえっているのか。劇場に足を運び、その目で確かめてほしい。

文/久保田 和馬

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