公開後までNGワードだった「失礼だな 純愛だよ」、“全部サビ”な主題歌…『劇場版 呪術廻戦 0』大ヒット達成の“仕掛け”をプロデューサーに聞いた!
「ファンの『楽しい』『おもしろい』を発信したい気持ちを、公式側で先に言わない」(齋藤)
――本作をプロモーションしていくうえで、最も大切にしていたことはなんですか?
齋藤「“ファン・ファースト”ということですね。宣伝チームは、決してこちらから押しつけるのではなく、ファンの皆さんの熱量を引き出すような形の宣伝プランを立てていました。ファンの皆さんが喜んだあと、そこに対してカウンターしていく…と言うと、すごく打算的に聞こえるかもしれませんが、ファンの『楽しい』『おもしろい』を発信したい気持ちを、公式側で先に言わないように心掛けていました。公開後まで、乙骨の『失礼だな、純愛だよ』のセリフをNGワードに設定し、お正月明けまで待って劇場でポスター展開をしたのもその一つですね」
――原作ファンにとって重要な“百鬼夜行の決行日”である12月24日に公開日を設定したことにも“ファン・ファースト”が表れていますね。当初から、この日に公開することは決めていたのでしょうか。
齋藤「公開日はファンの皆さんのテンションを継続させることができた一つのポイントかなと思っています。私たちとしては、12月24日に公開したいという思いはありましたが、編成の都合であまり早くから決められない場合もあるので、解禁時点では日付までは確定できていませんでした」
松谷「社内でも『この作品をヒットさせるぞ!』という気運が高まり、各セクションが協力して公開日を調整していきました。そして、その目標に向けて『完成させます!』と踏み切ってくれたMAPPAさんあって確定できたことです」
「何回でも観て楽しんでいただけるように」(松谷)
――予告編も見どころがギュッと詰まっていて、話題を呼びましたね。
齋藤「再生回数は10日間で1000万回を記録して、本作でも一番の再生回数を記録しました!本予告のリツイート数は、2021年の国内Twitterランキングで第2位でした!」
――様々な分野とのコラボなど、多様なプロモーションも印象的でした。
齋藤「マスに広げるためのタイアップ展開なども、かなりボリュームがある形で出していました。過去のアニメタイトルで取り組んできた実績もありますので、そういった経験を活かして、各担当が力を発揮できたと思います」
松谷「テレビアニメが2021年3月に終わって、映画公開まで期間が空いてしまうなか、ライセンスチームが商品化やタイアップを絶やさずに展開してくれたことや、配信チームが宣伝チームと連動しながら一挙配信施策などを展開することで、ファンの熱量をキープできたのかなと思います。本格的に映画の宣伝が始まってからは、MAPPAさんに仕上げていただいたビジュアルやPVを武器にしながら、公式アカウントによるSNSでの発信やパブリシティも丁寧に取り組んで、全国の劇場でも大規模にプロモーション展開できたことで、ファンの熱量を高めることができたのだと思います」
松谷「委員会各社の取り組みでいえば、集英社さんは原作が連載されている週刊少年ジャンプでの盛り上げはもちろん、各媒体での連合企画やノベライズの刊行をしていただき、多くの雑誌で表紙を飾っていただきました。新宿の交通広告が話題になりましたが、あれも集英社さんとSMEさんと一緒になって取り組めた施策です。サムザップさんからは初のスマホゲームアプリの企画が発表されていますが、その事前登録やPVを公開時期に合わせ、盛り上げを最大化できるように調整してくださいました。
宣伝を公開前だけではなく、公開後にも宣伝の軸足を置いていたのも今回のポイントでしたが、放送局のMBSさんでも複数な特番を企画していただき、特に1月に放送した特番がファンを広げる施策としては大きかったと思います。MAPPAさんもフィルム作りだけではなく、大量のすてきな版権イラストをコンスタントに調整していただきましたし、『アニメーション呪術廻戦展』といった催事等に力を入れてくださっていました。そういった各セクションの一つ一つの積み上げが効果的だったのかなと思っています」
――第2弾、第3弾…と入場者プレゼントも実施されてきましたが、こうしたリピーターの来場を期待したプロモーションは、やはり大切になってきますか?
松谷「ビジネス的な言い方をしてしまうとそうなんですけど、個人的には何回も観に来てくださる方に、なにかプラスアルファで持って帰ってもらえるものがあったらいいな、という気持ちも強かったですね。『何度でも観て楽しんでいただける映画にしたい』と思ってみんなで作ってきた作品であり、ストーリー的にも、乙骨と里香の軸、五条と夏油の軸、原作の隙間を補完している新しい部分など、本当に何回でも観ることができる内容とクオリティなので。IMAXやラージフォーマット4Dなど、いろいろな上映形式でやっているのでいろんな形態で映画を楽しんでもらえたらなと思っています」
「携わる皆さんが一丸となってつかんだ大ヒット」(松谷)
――公開後、ご自身も劇場に足を運ばれましたか?
松谷「初日0時上映や初日&大ヒット舞台挨拶も立ち会ってますが、もちろん、それ以外でも何度も観に行ってますよ!」
齋藤「私も妻と観に行きました。お客様みなさんからは観終わったあと、口々にいろいろな反応があって」
松谷「ありがたい限りです。映画の反響を数字だけではなくて、ネットであったり、リアルであったり、いろいろなお客さんから感じた時に、やっぱり映画でやれてよかったと感じますね」
――お話を伺っていると、なにか一つが突出してというより、あらゆる面において万全の態勢で挑んだ、という感じだったのですね。
齋藤「そうですね。『2021年公開のNo.1映画にしたい』ということを、集英社さん、MAPPAさんにもずっとお伝えしていました。大きな目標を共有しながら、そのためにはどうしたらいいのか、各セクションが逆算してパフォーマンスをしていただけたことが、最大のポイントだったんじゃないかなと思います」
松谷「映画って“お祭り”だと思うので。原作の力とアニメーションの力、そして携わる皆さんが一丸となってつかんだ大ヒットだということを強く感じています」
取材・文/石塚圭子