ピクサーが進化を続ける理由とは?『私ときどきレッサーパンダ』の敏腕プロデューサーが明かす“挑戦心”
ディズニー&ピクサーの最新作となる『私ときどきレッサーパンダ』がディズニー公式動画配信サービスの「ディズニープラス」にて独占配信中。これに合わせ、これまでピクサーで25年にわたってさまざまな作品に携わってきた敏腕プロデューサーのリンジー・コリンズが、本作の製作の裏側に込められたスタッフ陣の強い想いについて語った。
『インクディブル・ファミリー』(19)の併映短編として上映され、第91回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した『バオ』のドミー・シー監督が長編デビューを飾った本作は、“ときどきレッサーパンダになってしまう女の子”を描いた物語。舞台は1990年代のカナダ・トロントにあるチャイナタウン。伝統を重んじる家庭に生まれた13歳の女の子メイは、ある出来事をきっかけに本当の自分を見失い、感情をコントロールできなくなってしまう。悩み込んだまま眠りに就いたメイは、翌朝レッサーパンダに変身していたのだ。
『バグズ・ライフ』(96)を皮切りに、『トイ・ストーリー2』(99)や『ウォーリー』(08)など、プロデューサーとしてのみならず様々なかたちでピクサーの人気作に関わってきたコリンズ。「ピクサーでは“簡単すぎる”と感じたらそれは間違い。私たちは決して楽な道を選ばない。いつも違ったやり方をしてみようと挑戦する。でもそれは単に違うことをやるのではなく、それぞれのフィルムメーカーにしかできないその人らしいことをやる。なのでスタッフはとても柔軟で、違うことをやりたいという“ハングリー精神”に満ちているのです」と、常に観客に驚きを与え続けるピクサー作品の裏側に、挑戦心があることを明かす。
その上で最新作では、ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるピート・ドクターの協力のもと“これまでにないスタイル”を意識したのだとか。「彼は優れたビジュアルのセンスを持っているだけでなく、これまでとは違う新しいアニメーションのスタイルに挑戦しようとしました」。その例として挙げられたのは、“カメラに向かって話しかける演出”やキャラクターの感情の昂ぶりを表現する際に“目のなかにハートを入れて誇張する演出”で、いずれもこれまでのピクサー作品では見られなかった演出だ。
世界初の全編3DCGアニメーションを実現し映画の歴史を塗り替えた『トイ・ストーリー』(95)から27年。作品を重ねていくたびに技術的な面はもちろん、イマジネーションあふれるストーリーや世界観、キャラクター表現に至るまであらゆる進化と変化を積み重ねてきたピクサー。『私ときどきレッサーパンダ』もおどろきに注目して鑑賞してほしい!
文/久保田 和馬