南沙良、ミニシアターを巡るVol.20 早稲田松竹(後編)

コラム

南沙良、ミニシアターを巡るVol.20 早稲田松竹(後編)

「DVD&動画配信でーた」と連動した連載「彗星のごとく現れる予期せぬトキメキに自由を奪われたいっ」では、私、南沙良がミニシアターを巡り、その劇場の魅力や特徴をみなさんにお伝えします。第20回は高田馬場にある早稲田松竹さん。支配人の平野大介さんとの対談の模様をお届けします!

「自分の“観たい”を大切にすることが、劇場の色になっていきます」

早稲田松竹は昨年で開館70周年を迎えた、歴史あるミニシアター
早稲田松竹は昨年で開館70周年を迎えた、歴史あるミニシアター撮影/杉映貴子

南「かなり古い建物ですね」

平野「まもなく70周年です」

南「ええっ!」

平野「内装や設備は綺麗にしていますが、建物自体は建った当時のままです。東日本大震災でもヒビ一つ入らずで。念のため検査を入れたんですが、『頑丈すぎて気持ち悪い』って言われました(笑)」

南「すごい…。長い歴史のなかでは色々なことがあったんですよね」

平野「当初は新作の封切り劇場だったんですが、1975年にいまの形になりました。ロードショー公開が終わった映画の2本立てを基本に」

南「それで1300円って、すごくお財布に優しいですね」

平野「正直ちょっと無茶はしてるんですが、入場料だけでも喜んでいただけたらという気持ちです」

【写真を見る】「鎌倉殿の13人」に出演中の南沙良が早稲田松竹の魅力を紹介!
【写真を見る】「鎌倉殿の13人」に出演中の南沙良が早稲田松竹の魅力を紹介!撮影/杉映貴子 スタイリング/道券芳恵 ヘアメイク/坂本志穂

南「平野さんはどういう経緯で支配人になられたんですか?」

平野「元を辿ると、高校時代に客として通っていたんです。新宿駅、高田馬場駅、池袋駅が通学定期券の範囲内だったんですよ」

南「早稲田松竹のある高田馬場だ」

平野「いずれも映画館が多い駅なので、よく途中下車して映画を観てたんですが、早稲田松竹は2本立てなのでお金のない高校生にとってはありがたくて。ただ劇場で働く気はまったくなかったです(笑)」

南「じゃあ、どうして…」

支配人の平野さんに館内を案内していただきました
支配人の平野さんに館内を案内していただきました撮影/杉映貴子

平野「大学卒業後は映画に関係のない会社に就職したんですけど、20代の終わりごろにその会社を辞めちゃいまして。なにをしようかなあと考えてたところ、ちょうど早稲田松竹がバイトを募集していたので、働き始めました。で、そのまま社員になって、いまに至ります」

南「一般企業で正社員だったのに、辞めて映画館のアルバイト!?」

平野「(笑)。そのバイト当時、古い作品も試しにかけてみませんかと提案したら、採用してくれて。結果、ある程度の反響をいただき、以降は定期的にやることになりました。いわゆる名画座ですね」

南「じゃあ、いま月一でやっている『早稲田松竹クラシックス』って、バイト時代の平野さんの発案が元なんですか!?すごい!」

平野「かつて自分が通い詰めていた色々な劇場をお手本に、『こうだったらいいな』を形にした感じですね。現在の2本立てを決めているのも、ベテランのアルバイトですよ。もし南さんだったらどんな2本立てを企画します?」

南「難しいですね…」

 早稲田松竹では、毎月独自デザインのチラシがつくられています
早稲田松竹では、毎月独自デザインのチラシがつくられています撮影/杉映貴子


平野「僕だったら、とにかく自分が個人的に観たい2本かな」

南「自分の好みでいいんですか?」

平野「それが重要なんです。やり続ければ、やがて劇場の色やクセになり、そこに乗ってくれるお客さんが足繁く通ってくれますから」

南「じゃあ、私が大好きなB級サメ映画の『シャークネード』と、こないだ観た『シーワールドZ』。ワニとか魚とかタコがゾンビ化して人間を襲う内容です(笑)」

平野「いいですね!思いっきり振り切るほうが、乗ってくださる方は絶対にいます。そうやって冒険するもよし、早稲田松竹っぽい王道をかけるもよし。バリエーション豊かな編成は当館の自慢です。1か月のあいだにまったく違う傾向の作品をラインナップすることで、そのうち1作品でも『観たいな』と思ってくださればいいなって」

南「そこに『シャークネード』が入っていても、いいんですね」

平野「はい、もちろん!」

取材・文/稲田豊史

●早稲田松竹
公式サイト http://wasedashochiku.co.jp/
住所 東京都新宿区高田馬場1-5-16
電話 03-3200-8968
最寄駅 高田馬場駅/西早稲田駅

●南沙良 プロフィール
2002年6月11日生まれ、東京都出身。第18回ニコラモデルオーディションのグランプリを受賞、その後同誌専属モデルを務める。
女優としては、映画『幼な子われらに生まれ』(17)に出演し、デビュー作ながらも、報知映画賞、ブルーリボン賞・新人賞にノミネート。2018年公開の映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18)では映画初主演ながらも、第43回報知映画賞・新人賞、第61回ブルーリボン賞・新人賞、第33回高崎映画祭・最優秀新人女優賞、第28回日本映画批評家大賞・新人女優賞を受賞し、その演技力が業界関係者から高く評価される。2021年には、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021のニューウェーブアワードを受賞。
最近の主な出演作に『ゾッキ』(21)、『彼女』(21)、『女子高生に殺されたい』(22)、MIRRORLIAR FILMS Season3『沙良ちゃんの休日』(22)、TBSドラマ「ドラゴン桜」など。現在は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演中のほか、待機作に『この子は邪悪』(9月1日公開)などがある。
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