「ガンダム」シリーズのメカニックデザイナー石垣純哉が徹底解説!「映画ドラえもん」最新作登場メカへのこだわり
「アイデアで乗り切るところがおもしろさ」
本作に登場するメカは24点。オリジナルを踏襲したもの、山口監督の描いたラフが使われたものもあるが、多くのメカを石垣が担当している。
「今回は映画のなかでデザインを統一するというよりも、それぞれメカごとのデザインが求められました。例えば、映画の最初に登場するパピの宇宙カプセルはオリジナル版からあまり変えずにトレースしたり、逆にスネ夫のラジコン戦車はいちからデザインし直したりしました。そのあたりのさじ加減は山口さんのこだわりですね」。
デザインするにあたり、メカが得意なアニメーターでなくても描きやすいよう、線の数をむやみに増やさず形状も複雑にしないように求められたという石垣。作業に入る前に目を通したという1985年公開バージョンについて感想を聞いてみた。
「オリジナル版はいまのように大人も観ることは考えず、本当にキッズ向け映画として作ったと思います。でも、改めて観直すと、スネ夫の戦車の砲塔に細かい手すりまで付けていて、破綻することなくちゃんと動かしているんです。ディテールも、たぶん(本作に登場する)アストロ・タンクの倍以上あると思います。キッズ向け作品はいろんな制約があるので難しさはありますが、そのうえでどう見せるか。アイデアで乗り切るところがおもしろさでもあるんです」。
「『スター・ウォーズ』のスター・デストロイヤーみたいなのはどうだろう?」
映画で最初に見せ場を作るのが、パピを追ってピリカ星からやってくるクジラ型宇宙戦艦。パピを匿うのび太やドラえもん、しずかにも魔の手を伸ばす。デザインはオリジナル版をベースに、威圧感ある本格宇宙戦艦になっている。「最初に山口さんと、『「スター・ウォーズ」のスター・デストロイヤーみたいなのはどうだろう?』という話になったんです。そこでブリッジの位置などでスター・デストロイヤーを意識したら、それはさすがにやりすぎじゃないかと(笑)」。
クジラ型宇宙戦艦は3DCGでアニメーションされている。どこまでディテールにこだわるか、そのバランスに気をつけたという。「このメカは最初から3DCGで作ることが決まっていたので、細かいディテールを増やしても大丈夫ということでした。ただ、一つの作品のなかで考えると、凝りすぎてしまうとバランスが崩れてしまいます。そこである程度に抑えてデザインし、必要だと思ったら3Dモデルのチェック時に加筆することにしたんです。最終的には山口さんの判断に委ねました」。