ギレルモ・デル・トロ最新作『ナイトメア・アリー』、ケネス・ブラナーの体験を描く『ベルファスト』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、妖しいカーニバル一座でトップとなった男の栄光と闇を映しだすファンタジー、ケネス・ブラナーの経験をもとに、戦争により分断された街の姿を描くドラマ、マイケル・ベイが人気キャストを迎えて贈るノンストップアクションの、心を奪われる3本!
華麗なる狂気をはらんだデル・トロの新境地を目撃せよ…『ナイトメア・アリー』(公開中)
今度のギレルモ・デル・トロ監督はいつもとちょっと違う。トレードマークの”異形の者”は鳴りを潜め、むしろリアリティを持って浮かび上がるのは、多様な過去を抱えた人間たちだ。始まりは1939年。怪しいカーニバル一座に身を隠した男(ブラッドリー・クーパー)はふと読心術に手を出し、その才能を開花させていく。やがて華やかなショービジネスへと上り詰める彼だったが、そこに心理学者(ケイト・ブランシェット)や、一筋縄ではいかない富豪が絡まって、心をめぐる攻防は次第に危険なものへ───。人の内面は見かけだけでは決して読み解けない。セピア色の光によって浮かぶ深い傷跡と、運命のらせん。俳優たちのかつてない表情や旨味を抽出するデル・トロの語り口には流麗なまでの狂気がみなぎり、とりわけ終盤の展開は鳥肌が立つほど鮮烈だ。この全てを包む構造こそまさに”異形”と呼ぶにふさわしい。我々を醒めぬ悪夢、出口なき迷宮へいざなう傑作である。(映画ライター・牛津厚信)
世界各地での争いや分断に思いを馳せる“いま観るべき一作”…『ベルファスト』(公開中)
北アイルランド、ベルファスト出身のケネス・ブラナーが、自らの少年時代をモチーフに脚本を書き、監督を務めた渾身作。アカデミー賞で作品賞など7部門にノミネートされた。1969年のベルファストで、プロテスタントの武装集団による、カトリックの住民への攻撃が激化していた。9歳のバディの一家は、その暴動のなか、住み慣れた町を離れるべきかどうか決断を迫られる。町の混乱、家族の絆、少年時代の淡い初恋などが、監督の分身であるバディの目線で描かれ、厳しい現実にもどこかピュアな優しさや、軽やかなユーモアも加味。誰もが感情移入しやすい仕上がりだ。ほぼ全編、モノクロの映像もノスタルジーを喚起しつつ、一部カラーになるシーンの意味もテーマと深く結びつくなど、映画的歓びをもたらす。いつまでも心に残る秀逸なラストシーンとともに、世界各地での争いや分断に思いを馳せる、まさに「いま観るべき一作」。(映画ライター・斉藤博昭)
重傷者の救命と逃亡の二重のスリルが絡み合う…『アンビュランス』(公開中)
「トランスフォーマー」シリーズでおなじみの“破壊王”こと、マイケル・ベイ監督がリアリティ重視の強力アクションを放つ!銀行強盗を働いた兄弟が救急車を奪い、女性救命士を人質に取って逃走。ところが、そこには移送途中の瀕死の警官が乗り合わせていた…。金は奪っても人の命は奪いたくない、そんな兄弟のこだわりが物語を面白くし、重傷者の救命と逃亡の二重のスリルが絡み合う。加えて、ロサンゼルス市内でのカーチェイスはベイ作品ならではの見せ場。ハンディカム撮影や空撮などを織り交ぜた、ライブアクションの迫力に圧倒されるに違いない。壮絶な逃走劇の結末は、いかに?最後の最後まで目の離せないドラマに、釘付けになって欲しい。(映画ライター・有馬楽)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼