涙ながらに語った喜びと謝罪…およそ3分間のウィル・スミススピーチ全文「愛を入れる器になりたい」
本来ならば、俳優人生を象徴するような名誉を祝う輝かしい夜になるはずだった。2002年の第74回アカデミー賞では『アリ』(01)、2007年の第79回では『幸せのちから』(06)でそれぞれ主演男優賞にノミネートされていたが、受賞は初。ウィル・スミスが『ドリームプラン』(公開中)で演じたリチャード・ウィリアムズは、テニスプレイヤーのセリーナ&ビーナス・ウィリアムズ姉妹の実父。荒唐無稽で破天荒なリチャードは、娘たちの未来予想図、"ドリームプラン"を作成し、見事成し遂げ姉妹を世界チャンピオンのテニスプレイヤーに育て上げた。
授賞式半ばの長編ドキュメンタリー賞のプレゼンターで登壇したクリス・ロックとスミス夫妻は旧知の仲で、彼の毒舌が制御不能なことも知られている。それでも、なにかがウィルの理性スイッチを切ってしまったようだ。アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは、番組終了後に「いかなる暴力も看過することはできない」と声明を発表し、本件の正式な調査を行う。アメリカ国内世論も分かれている。今年の授賞式は、技術賞など8部門を生放送から追い出しただけでなく、程度の低いジョークでさんざん俳優たちをいじった結果、この夜に最も祝福されるべき人が長く辛い審判にかけられるような事態に陥ってしまった。
平手打ち事件から1時間後。ドルビーシアターを埋める観客と、1600万人強のアメリカのテレビ視聴者、数千万人の世界中の視聴者が固唾を飲んで見守るなか、ウィルは時々声を震わせ涙を流しながら、およそ3分間に及ぶスピーチを行った。この後の主演女優賞のプレゼンターとして登壇した、昨年の主演男優賞受賞者アンソニー・ホプキンスは「なんという夜でしょうか。ウィル・スミスがすべてを語ってくれました。これ以上なにを言えるというのでしょう。平和と愛と静けさを手に入れましょう」とスピーチした。