『マリー・ミー』では歌姫を好演!メディアを駆使する表現者ジェニファー・ロペスの敏腕プロデュース力
映画のための初アルバム制作も!主演のみならずプロデューサーとして大活躍
そんなロペスが『ハスラーズ』に続いて女性監督と組んだ『マリー・ミー』では、世界的なスーパースターであるキャット・バルデスを演じている。キャットは常に専用のムービーカメラマンを従え、SNSもフル活用して情報発信。そして音楽界の超新星バスティアン(マルーマ)との結婚式も全世界に生配信する予定だったが、本番直前に彼の浮気が発覚。焦った彼女はステージ上からチャーリー(オーウェン・ウィルソン)にとっさにプロポーズをしてしまう。そうして始まった前代未聞の結婚だったが、彼女はポップスターではない“ありのままの自分”を見てくれるチャーリーに心惹かれていく。
「この映画は文字通り、セレブであることがどんなことなのか、そのベールの裏側に迫っているのよ」と語るロペスは、「この映画には無駄がなく、すべてに真の目的と楽しみがあるの。音楽映画でもあり、私が大好きなロマンティック・コメディと、演技とダンスと歌、すべてを一緒にしている。それは、私たち全員にとってエキサイティングなことだったわ」と撮影を振り返っている。
また本作では、セットではなくマルーマの実際のコンサートに飛び入り参加して撮影したバスティアンとキャットのパフォーマンスシーンがある。そのことについて米トーク番組「The Tonight Show Starring」で ジミー・ファロンに質問されたロペスは、「私の中のプロデューサーが『これは利用できる』と言ったの」と返答。彼女の提案を快諾したマルーマによって実現したこのシーンでは、サプライズに喜ぶ観客のリアルな反応が作品を盛り上げているので注目してほしい。
今回タイトル曲「マリー・ミー」のほか9曲のオリジナル曲が提供されたが、「この映画で曲を作るのが夢だった」というロペスが映画のためにアルバムを制作するのは実は初めてのこと。喜びや悲しみ、メランコリックといった様々な感情がこもった楽曲はどれも絶品で、アーティストとしての新たな魅力も見せつけている。
『ハスラーズ』の成功の際には、プロデュース業について「ラテン系のアーティストに機会と場を提供したい」とインタビューで語っていたロペス。このほかにも長年タッグを組んでいるエレイン・ゴールドスミス=トーマスと米Variety 「Power of Women」のズーム対談で「女性や有色人種を雇用する能力があるなら、そこに目を向けるのが我々の義務」というエレインの言葉に「もちろんよ」と大きく頷いていたのも印象深い。
有能なプロデューサーである彼女にとって、映画は純粋なエンタテインメントである一方、自身の主義や主張を表現する場であり、ラテン系俳優や女性監督&俳優に機会を与える場でもあるのだ。
ロペス率いるニューヨリカン・プロダクションズでは、昨年Netflixと複数年のファーストルック契約に合意した。
さらに2004年に婚約解消、2021年4月に復縁していたベン・アフレックと先日再び婚約したことを自身のニュースレター「On The JLo」でファンに報告したばかり。公私ともに絶好調なロペスの圧巻の歌声と演技が堪能できる『マリー・ミー』は、大きなスクリーンで体感するのがおすすめだ。
文/足立美由紀