「敵役はいかに主役を立たせられるか」『鋼の錬金術師』新田真剣佑が語る、スカー役への心構え
「自分がやろうと思ってできなかったことはない」
撮影当日にCG予定だったシーンをワイヤーアクションに変更したこともあったという。「実はその変更シーン、僕自身は覚えていないんです(笑)。スタッフさんにとってはすごく印象的だったようで…。多分、自分でやれるから、このままやっちゃいましょう、と言ったのだと思います。生身でやれるならやったほうがいいのは当然のことだと思っているので」と力強く語る。「自分の仕事は自分でしたい。つまり、自分の役は自分で演じたいので、スタントの人にもやってもらいたくないという気持ちがあります。意地です!(笑)」。
自分の役はなるべく自分でと思っても、ベースがなければできないこともあるはずと伝えると「これまで自分でやりたいと思ってできなかったことはないです」とキッパリ答えた。「できないという壁にぶち当たった時に挫折を味わうのだと思いますが、それを経験するのとしないのとでは、その先の役者人生が大きく違ってくるはずです。いま25歳になり、これからいろいろなことが待っていると思うのですが、その挫折も楽しみにしています」と答えた。「僕は、自分はなにが得意で不得意なのか、そして自分の体のこともよくわかっています。だからこそ、自分でやれることはやるべきと考えています」と自身の姿勢について丁寧に説明してくれた。
劇中で戦う相手、エドを演じる山田とは密にコミュニケーションを取ったという。「撮影に関することもそうでないこともたくさん話しました。山田さんは体作りもかなり気合いが入っていました。スタッフさんがオープンセットに懸垂用の器具を作ってくださったので、休憩中にもトレーニングできたし、撮影に備えることができました。現場に用意していただいた器具をクランクアップの時に記念でいただいたんです。いま、自宅のベランダに置いてあるので、日本にいる時の体作りに活用しています!」。
体作りまで込みでケアしてくれる現場は珍しいと説明した新田。「普通はそこまでのケアはないです。役のための体作りや準備を作品のためと考えるか、役者自身のアプローチと考えるかの違いだと思うのですが、この作品はチームでスカーという役を作り上げました。役作りは個人でというパターンが多いなか、こういう現場は初めてだったので、とても新鮮でした」。
撮影中は「自分のことで精一杯だった」という新田は、自身の演じるスカーに対しての意見を山田に何度も求めたという。「スカーは対主役でとても重要な役どころです。“僕のスカー、大丈夫ですか?”とその都度問いかけていました。主役に納得してもらわないとダメだと思うし、敵役はいかに主役を立たせられるかだと思っているので」とスカーとしての立ち位置について説明。今回に限らず、敵役を演じる際には、相手からどう見えるのかを確認するのが新田流だとし、「もっとこうしてほしいなど、リクエストがあったらどんどん言ってください、と必ず主役の方には伝えています」と教えてくれた。
インタビュー時点で完成版を観ていなかった新田は「日本でこれほどの技術が観られるなんて、ハガレンファンのみなさんはとてもラッキーだと思います。と同時に、この作品ですばらしいキャスト、スタッフとご一緒できたことをとても幸せだと感じています。どんな世界観に仕上がっているのか、どれほどすごいCGが施されているのか、みなさんと同じように僕自身もとても楽しみにしています!」と期待に胸を膨らませていた。
取材・文/タナカシノブ