薬師丸ひろ子演じる母と木竜麻生演じる娘の再会シーンは感涙必至!『とんび』本編映像&場面写真が解禁
重松清の傑作小説を、阿部寛と北村匠海の共演で描く『とんび』(公開中)。本作より、その名シーンの本編映像が解禁となった。
瀬々敬久のメガホンにより、幾度途切れても必ずつながっていく親子の絆を描く本作。瀬戸内海に面した港町で、運送業者として懸命に働くヤス(阿部)。息子のアキラ(北村)が生まれ、ようやく手に入れた幸せは妻、美佐子(麻生久美子)の事故死によって脆くも打ち砕かれてしまう。悲しみに暮れながらも町の人々の温かな手を借りてアキラを育てていくヤスだったが、東京の大学に合格したアキラに別居の寂しさを素直に伝えられず突き放してしまう。
本作では、ヤスとアキラによる“父と息子”の親子愛を描いているが、実はもう一つ、“母と娘”の物語が綴られている。それは、小料理屋「夕なぎ」の女将、たえ子(薬師丸ひろ子)とその娘、泰子(木竜麻生)の物語だ。たえ子は、農家に嫁いで2年目に生まれた泰子がいた。しかし、生まれた子が男の子でなかったことから、嫁ぎ先の家族から心無い言葉を浴びせられてしまい、たえ子は娘を置いて逃げてしまった。そのまま生き別れた二人だったが、成長した泰子が、縁談が決まったことをきっかけに、母に会おうと夕なぎを訪れる。
映像では、たえ子が暖簾をくぐる泰子を「いらっしゃーい…」と迎え入れるも、途端に娘に気づき、目もくれない様子が映しだされている。お茶を注文した泰子に対し、たえ子は「飲み屋に来たらお酒飲みんさい。郷に入れば郷に従え、言うでしょう」とよそよそしく振る舞う。娘を捨ててしまった自責の念から、愛娘との再会もうまく感情が表せず、冷たく接してしまうたえ子は、その後も思ってもないことを次々に口にしてしまう。
しびれを切らした照雲(安田顕)が「たえ子さん、そのお嬢さんになんか食べさせてあげんさいよ。『夕なぎ』の料理は全部、お袋さんの味じゃがな」と、たえ子に伝えると、重い腰をあげて料理を作りだす。泰子に振る舞った料理は、婚礼のお祝いに使われるというハマグリの吸い物。不器用ながらも真っ直ぐ、料理で想いを伝えたたえ子が「おいしい?」と聞くと、「おいしいです」と答える泰子。そして顔を見つめ合うと、お互いに我慢していた気持ちがあふれだし二人は涙する。
どんな関係や環境になっても、母は子のことを愛し続け、子は母を想い続ける。そんな、未来へつながる家族の絆の物語をぜひ劇場で観ていただきたい。
文/山崎伸子