北米ランキングは嵐の前の静けさ…リーアム・ニーソン最新作がベストテン入り
先週末(4月29日から5月1日)の北米興収ランキングは、現地メディアの多くもそう形容しているように、まさに“嵐の前の静けさ”。翌週に『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(日本公開中)を控えていることもあり大作の公開もなく、前週から上位に大きな変動は見られず。ドリームワークス・アニメーションの『バッドガイズ』(2022年日本公開)が2週連続で首位を獲得することとなった。
『バッドガイズ』の2週目末の興収は、前週から32.2%ダウンの1623万ドル。同スタジオの近作の初週末から2週目の推移を振り返ってみれば、『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』(21)は44.5%ダウン、『クルードさんちのあたらしい冒険』(20)は54.3%ダウン、『スノーベイビー』(19)は42.2%ダウン。それらを踏まえると、安定感のある興行とみることができよう。すでに北米累計興収は4458万ドルを突破。全世界興収も1億2000万ドルを突破している。
第8位に初登場を果たしたのは、リーアム・ニーソンの主演最新作で『007 カジノ・ロワイヤル』(06)などで知られるアクション映画の名手マーティン・キャンベル監督が手掛けた『Memory』。2003年に公開されたベルギーとオランダの合作映画『ザ・ヒットマン』をリメイクした本作は、アルツハイマーを理由に引退を考えていたプロの殺し屋のアレックスが、ターゲットが少女であることを知り任務を放棄。依頼者である危険な組織から狙われてしまうというアクションスリラーだ。
2020年以降で早くも6作目の主演映画(そのうち1作は北米ではNetflix配信)となり、すっかり“コロナ禍の映画界の顔”となりつつあるニーソン。初日から3日間の興行収入は2555館で311万ドルとやや低調で、昨年1月に北米公開された『マークスマン』(21)とほぼ同水準。肝心の作品評価を批評集積サイト「ロッテン・トマト」から参照すると、コロナ禍に劇場公開されている同ジャンルの近3作と同様、批評家からは辛辣な意見が多数を占めているのに対し、観客からは好意的評価が80%を超えるほどの支持を集めている。
比較的高い年齢層の観客にとって、映画館に足を運ぶ動機付けの一つとなっていることは確かな近年のニーソン映画。それでもキャンベル監督とのタッグにガイ・ピアースやモニカ・ベルッチの共演という話題性を加味すると、本作の1000万ドル前後と推察される最終的な興収の着地点は、少々期待はずれと言って差し支えないだろう。
3週連続で2位をキープした『ソニック・ザ・ムービー/ソニック vs ナックルズ』(8月19日日本公開)は、全米累計興収も全世界興収も共に前作超えを達成。すでに製作が決まっている3作目へ大きな弾みをつけた。また1位から7位の顔ぶれにこそ変化はないが、勢いの衰えない『Everything Everywhere All at Once』が、前週初登場を果たしたニコラス・ケイジ主演の『The Unbearable Weight of Massive Talent』を逆転し5位にランクアップ。
次週末は『ドクター・ストレンジMoM』がどのような記録を打ち立て首位に立つのか、その一点に注目が集まるところだ。
文/久保田 和馬