能楽師、琵琶法師、平曲…伝説の能楽師・犬王の“語られなかった物語”を知るキーワードまとめ
心躍るトップクリエイターが集結!
映画化するにあたって集結したのは、躍動感あふれる作風が持ち味のクリエイター陣だ。監督は、京都を舞台にした「四畳半神話大系」や、アニメーションを作る高校生たちのイマジネーションを描く「映像研には手を出すな!」などを手掛ける湯浅政明。『夜明け告げるルーのうた』(17)などでも見せた、鮮やかな色彩やしなやかに動くいきいきとしたキャラクターといった、湯浅らしい独創性が本作でも発揮されている。
さらに、漫画「ピンポン」や「鉄コン筋クリート」などで知られる松本大洋がキャラクター原案を担当し、表情豊かで喜怒哀楽がはっきり伝わってくる魅力あふれる登場人物たちを生みだした。そしてそのキャラクターたちに、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」や「アンナチュラル」などの話題作を連発する脚本家、野木亜紀子が息を吹き込み、犬王や友魚、周囲の人々の一筋縄ではいかない、それぞれの思惑が絡み合う物語を描いている。また、本作の見どころの一つである音楽面では、「あまちゃん」、『花束みたいな恋をした』(21)の大友良英が、時にポップに、時に繊細に、時にロックに、彼らの感情を増幅させるような劇伴を制作。それぞれにおいて、エキスパートとも呼べる面々が勢ぞろいし、600年前のエンタテインメントに沸く京都をセンセーショナルに映像化した。
無邪気かつ高い志を持つ犬王を演じるアヴちゃん
犬王の声優を務めるのは、ロックバンド「女王蜂」のボーカルを務めるアヴちゃん。鋭い低音から非常に高い歌声までを同じメロディ内で一気に歌い分けるなど、常人離れした歌唱力で知られており、型にハマらない独自のパフォーマンスを極めていった犬王との相性は抜群だ。これまでも様々な映像作品で楽曲を担当している女王蜂だが、彼らにとって最初のタイアップ曲が、今回タッグを組む森山が主演した映画『モテキ』(11)の「デスコ」だった。
ほかにも『貞子』(19)や、アニメと実写映画の両方で「東京喰種」の主題歌を担当し、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、「SUMMER SONIC」など多くの大型フェスに出場するトップバンドのボーカルであるアヴちゃんだが、同じく湯浅監督が手掛けた『DEVILMAN crybaby』(18)でも声優として出演し、その力強い声は音楽という枠に留まらない。本作でも、無垢な少年のような声と、ドスの効いた野心家としての声をシームレスに使い分けており、犬王のカリスマ性を象徴的に演じている。
森山未來が、静かなる情熱を秘める犬王の相棒、友魚に
一方、犬王の相棒である友魚の声優を務めたのが『アンダードッグ』(20)、『ボクたちはみんな大人になれなかった』(21)の森山未來だ。盲人の琵琶法師となった友魚のナイーブな一面から、犬王との邂逅によって秘めた情熱を露わにしていき、強い歌声も見せるなど、持ち前の演技の幅を十分に活かした声を披露。ドラマや映画はもちろんのこと、2008年の「RENT」、2011年の「髑髏城の七人」といった様々なミュージカル作品に出演、さらに昨年は「東京2020オリンピック」の開会式でパワフルなダンスを披露するなど、一つのジャンルに収まらないパフォーマンスを見せた森山は、ハードロックのような奏法で群衆を沸かせる型破りな長髪の琵琶法師役にまさに適任である。
語られなかった物語が次々と紡ぎだされ、ミュージカルとして観る者を沸かせる『犬王』。 自らのパフォーマンスに自信と誇りを持ち、群衆の心をつかんだ犬王と友魚がスクリーンで躍動する姿をぜひ目に焼き付けたい。
文/鈴木レイヤ