ガンダムの普遍的なテーマを凝縮した『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』、伊藤健太郎の好演光る『冬薔薇』など週末観るならこの3本!

コラム

ガンダムの普遍的なテーマを凝縮した『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』、伊藤健太郎の好演光る『冬薔薇』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、阪本順治が伊藤健太郎に当て書きしたドラマ、「機動戦士ガンダム」のテレビシリーズ第15話をリメイクした劇場版、「ザ・ポーグス」の破天荒なボーカルの姿を映しだしたドキュメンタリーと意欲あふれる3本。

小さき者に寄り添った「戦争」を描く物語…『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(公開中)

伝説的エピソード「ククルス・ドアンの島」を再映像化した『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』
伝説的エピソード「ククルス・ドアンの島」を再映像化した『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』[c]創通・サンライズ

「機動戦士ガンダム」劇場版3部作の完結編であった『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙』(82)から40年。安彦良和の手によって、一年戦争を舞台にした待望の劇場作品『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』がついに公開。地球連邦軍がジオン公国軍に対する大規模反抗作戦を準備するなか、ホワイトベース隊はある無人島を調査する命令を受ける。現地に向かったガンダムのパイロット、アムロ・レイ(声:古谷徹)はジオン軍のザクと対峙。戦いのなかで気を失ったアムロは、島で孤児たちと暮らすジオン軍の脱走兵、ククルス・ドアンと出会う。アムロは失ったガンダムを探すなかで、ドアンや島の子どもたちと交流し、これまでにない経験を重ねていく。しかし、この島には大きな秘密が隠されていたのだった…。安彦良和が描くイメージを忠実に再現したクオリティの高い作画、CGを駆使して描かれるモビルスーツの戦闘、ホワイトベースクルーたちの登場と活躍などは、ファンが待ち望んだ現代の技術で再現された「みんなが観たかった最高峰のガンダムの映像」となっている。物語として注目すべきは、脱走兵や孤児という、戦争の被害者である者たちへスポットが当てられている点。戦禍で生きる小さき者を、「モビルスーツのエースパイロット」という枠から離れ、一人の15歳の少年となったアムロの視点から見せる作劇からは、「戦争」という状況とそこに生きる人々を真摯に描く、ガンダム作品の持つ普遍的なテーマ性を読み取ることができるはずだ。
(ライター・石井誠)

ある種、突き放したラストこそ本作を忘れ難きものに…『冬薔薇』(公開中)

【写真を見る】ダラダラ生きる青年、淳が思いがけず事件に巻き込まれていく『冬薔薇』で伊藤健太郎が好演
【写真を見る】ダラダラ生きる青年、淳が思いがけず事件に巻き込まれていく『冬薔薇』で伊藤健太郎が好演[c]2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS

ベテラン監督、阪本順治が、伊藤健太郎に当て書きで完成させたオリジナル脚本。ダラダラ生きてるダメ男が一念発起しかけるも、やっぱりダメで…という、どうしようもない話だが、これがどうして面白い。服飾系の専門学校に在籍しているが、チンピラ仲間とつるんでダラダラ過ごしている淳(伊藤)は、なにもかもが中途半端。先細りしていく会社(埋め立て用の土を船で運ぶ海運業)をなんとか経営する両親とも、ほぼ会話はない。ある日、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起き、思いもよらぬ人が犯人だと判明し…。寂れた港町を舞台に、淳とチンピラ仲間が繰り広げる日々のいざこざ、父の船の仲間らの日常風景が絡み合って物語が綴られる。まずもって淳の口先だけの虚勢や身勝手さにイライラするが、それは同時に自分の中にも似た面を認めるからか。一方、船上のオジさまたちの阿吽の呼吸による会話には、クスリと笑わされる。その緩急に導かれ、淳の家族関係や互いの心情がうっすら見えて来て、心がざわざわする。ベテラン俳優勢の味わい深さは言うまでもないが、それらに揉まれて押し上げられ、ひるむことなく“まんま!?”と思わせる伊藤の好演も光る。人生ってしょっぱい!簡単に感動や解決に持ち込まず、ある種、突き放したラストこそ本作を忘れ難きものにしている。(映画ライター・折田千鶴子)


酔いながら会話するシーンの“ほっこり感”は必見…『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』(公開中)

“アイリッシュパンク”を生んだバンド「ザ・ポーグス」のフロントマンの人生を追う『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』
“アイリッシュパンク”を生んだバンド「ザ・ポーグス」のフロントマンの人生を追う『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』[c]The Gift Film Limited 2020

アイルランド出身で世界的な人気を得たバンド、ザ・ポーグス。そのボーカルで、数々の名曲を作ってきたシェイン・マガウアンを追ったドキュメンタリーだが、あまりに過激で波乱万丈な人生に冒頭から圧倒されまくる。4歳で飲酒と喫煙を覚え、すぐに常習化。デビューした後もつねに酔ってステージに上がって歌っていたなど、まさに「破天荒」という言葉がぴったり。そのシェインが60代の現在、飲酒などが原因で体をこわし、それでも再起を諦めない姿もカメラは収めていく。一人のミュージシャンの生きざまに、ロンドン・パンクやアイルランドの歴史も重ねられ、ポーグスの日本ツアーの一部がアニメで表現されたりと、一本の映画としても飽きさせない作り。シェインの30年来の親友で彼の結婚式にも出席したジョニー・デップが本作のプロデューサーを務めており、その2人が酔いながら会話するシーンの“ほっこり感”は必見だ。もしポーグスを知らない人でも、この映画を観たら、奇跡の名曲「ニューヨークの夢」をじっくりと聴き直したくなるはず!(映画ライター・斉藤博昭)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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