初代「ウルトラマン」古谷敏、番組降板を覚悟した過去「もう辞めようと心に決めていた」
『シン・ウルトラマン』(公開中)の大ヒットを記念して、本日より12日(日)までの10日間、全国13劇場にて実施される庵野秀明セレクション「ウルトラマン」4K特別上映を記念したトークイベントが3日、TOHOシネマズ 池袋にて開催され、初代ウルトラマンのスーツアクターを務めた古谷敏が登壇。映画評論家でクリエイティブディレクターの清水節がMCを務め、『シン・ウルトラマン』の見どころや、初代「ウルトラマン」誕生裏話を語った。
『シン・ウルトラマン』では、モーションキャプチャーのアクターとしてもクレジットされている古谷。本作には、本物のウルトラマンのアクションがたくさん散りばめられており、制作陣のウルトラマン愛を感じたとしみじみ。CGで表現されるウルトラマンは「僕よりもかっこいい!」とニッコリ。「あの動き、しなやかさは僕には出せなかったと感じています」としながらも、「庵野さんが僕のことを好きでいらっしゃったことが伝わってきました」とCGのみで描くことができたはずのウルトラマンに、古谷色を感じるポイントがたくさんあったと説明していた。
第18話「遊星から来た兄弟」、第26話「怪獣殿下(前篇)」、第28話「人間標本5・6」、第34話「空の贈り物」の庵野セレクションについては「とてもおもしろいセレクト」と微笑んだ古谷。第18話「遊星から来た兄弟」では、にせウルトラマンとの戦いを振り返り、「僕がウルトラマンの役を降りたら、この人がウルトラマンをやるのか想像したときに、ほかの人にウルトラマン役をやらせてはいけない、というある種の覚悟のようなものができたエピソードです」と思い出を語った。
第26話「怪獣殿下(前篇)」について清水が、「前編だけというのが庵野監督らしい」とコメント。庵野監督のセレクト理由は「ウルトラマンが美しくやられている」からだという。古谷は「前編は叩かれっぱなしのやられっぱなしで、どうしようもないウルトラマンです。でも、後編ではかっこいいウルトラマンになります。古代怪獣ゴモラがとにかく強くてかっこよかったです」と懐かしそうに話した。
等身大のウルトラマンが登場する第28話「人間標本5・6」では「とにかく等身大を見せるのが恥ずかしかったです」と照れた古谷。「三面怪人ダダの登場回。僕はアクションはできないと伝えてあったのですが、日頃からプロレスや空手をよく見ていたので、(アクションの)参考にしました」とダダに決まるかっこいい蹴りができるまでの裏話も披露した。
第34話の「空の贈り物」は実相寺昭雄監督回であることに触れ、「実相寺監督は、まず怪獣ありきという考え方で、怪獣をどう撮影するのかがテーマでした」と解説。「だから、ウルトラマンの僕はあまりなにもしない、楽な回です」とニヤニヤした古谷だが「実相寺監督回は当時変化球とされていましたが、時代とともに受け入れられているのを実感しています」とうれしそうにコメントしていた。
撮影中に、ウルトラマン役の降板を覚悟したことを振り返った古谷。「もう辞めます、と伝えようと心に決め、バスで撮影所に向かいました。途中でバスに乗り込んできた子どもが、ちょうど放送中のウルトラマンの話で大盛り上がり。バスのなかはとても賑やかになって…」と「ウルトラマン」の影響力を目の当たりにしたといい、「この子供たちの夢をなくしてはいけない、がんばろう」と、ウルトラマン役の継続を決心できたと感謝していた。
イベントには20代のファンが多く来場していることに触れ、「新しいウルトラマンで、昔のウルトラマンに興味を持ってもらえるのは、本当にありがたいです」と満面の笑みを浮かべた古谷。「これからもどうぞよろしくお願いいたします」と深々とお辞儀をした後、自身の著書が夏に「第5刷」となることに触れ、「ぜひ、本も買ってください!」としっかりアピールし、イベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ