福本莉子が書店員に!?「セカコイ」特設コーナー作りを独占レポート
第26回電撃小説大賞でメディアワークス文庫賞を受賞した一条岬の同名小説を映画化した『今夜、世界からこの恋が消えても』が、7月29日(金)に全国公開を迎える。1日ごとに記憶がリセットされてしまう前向性健忘という難病を背負うヒロイン、日野真織を演じるのは女優の福本莉子。道枝駿佑(なにわ男子)とのダブル主演となる本作は、真織とその同級生、神谷透との儚くもせつない愛の物語となっている。
映画の公開を前に期待が高まりつつある6月9日、福本は開店前の紀伊國屋書店新宿本店を訪れた。目的は、原作「今夜、世界からこの恋が消えても」が並ぶ特設コーナーの設置。今回MOVIE WALKER PRESSは、お客さまに楽しんでもらう工夫を凝らしたり、几帳面な性格も発揮しながら書店員体験を楽しむ福本に、独占で密着させてもらった。
元気に書店に現れた福本は、鮮やかな花柄が印象的なワンピースの上に紀伊國屋書店のエプロンを着けると、カメラに向かって笑顔を弾けさせた。「私、大阪出身なんですけど、梅田の紀伊國屋さんによく行っていたんです。いつも見ていたエプロンだったので、嬉しいです」。
まずはバックヤードで、パネル、ポスターへのサイン入れとオリジナルのPOP作り。映画タイトルとコメントは一字一字心を込め、公開日は目立つように青のペンで記入した。
黄色の字でさりげなく書かれた「本人です!」の字は「わかる人にはわかるように(笑)」とのこと。これまで三省堂書店名古屋本店、星野書店近鉄パッセ店と訪問してきた福本は「ペンの色は書店さんによって、変えています。書店ごとに色の組み合わせを変えたらおもしろいかなと思って。ちょっとしたこだわりですね」と笑う。
その後、売り場に移動すると、先ほど作成したPOPやパネルを原作小説と共に並べて、「今夜、世界からこの恋が消えても」の特設コーナーにしていく。スタッフから「完成ですね!」と声をかけられたあとも、福本は積み上げられた本の高さが揃っているかを気にするなど、細部までこだわりつつ「血液型はB型なんですけど、変に几帳面なんですよ。1回気になるとすごく気になってしまうんです。でも雑なところは雑です(笑)」とはにかんでみせた。
特設コーナー設置を終え、このあとも都内の書店をまわる予定だという福本に、感想を聞いた。「開店前の書店に来たのは初めてだったので、新鮮でした。いつもはそこまで感じたことがなかったんですが、本の香りがすごくしたのは開店前ならではだな、と感じました。本を並べるのもすごく楽しかったです」。よく似合うエプロン姿に思わず「こんな店員さんがいたらいいですよね」と声をかけると、福本は「私ですか?」と照れながら、「楽しそうですよね。ちょっと興味を持ちました」と口にした。
高校生のころから芸能の道へと進んだ福本。アルバイトの経験はないが、関心はあったのだそう。「ドーナツが好きだったので、ドーナツ屋さんで働いてみたかったです。アルバイトだとドーナツをもらえるじゃないかなと思って」と微笑み、「本屋さんもすごく楽しそうですよね。映画館でチケットをさばくのもやってみたい」と楽しそうに想像を膨らませる。
映画の主演という立場から見た原作の印象を聞くと「映画は2時間にまとめるから難しいところもありますが、原作はやっぱりそれぞれの心情がより丁寧に描かれていますよね。映像で私たちが表現する感情が、字で書いてあることでよりわかる部分もあるなと思いました。真織と透が積み重ねてきた時間の経過も、映画以上に深く描かれて、私も展開を知っているのに何回も泣いてしまいました」と打ち明ける。「新幹線で読んでいたんですけど、号泣しちゃって。役作りのために何回か読み返していたんですけど、 それでも泣いちゃうんです。せつないですね」。
電子書籍が増えている時代だからこそ、新たに気づく紙の本の魅力もあるのだという。「自分のお気に入りのページにマークをつけておくと見返せるし、紙のほうが読み返しやすいんじゃないかなと思います。持っていてウキウキもしますよね」。
原作がある作品の映像化に出演する機会も多い。心掛けているのは「作品に入る前に原作を読みまくる」ことだという。「原作と映画で、同じシーンを再現するような時は、原作に書かれていることを台本に書き写して、演技の参考にしています」。その一方で、「でも現場に入ってからは、相手とのやり取りのなかで感じたものも大事にするので、原作の再現とその場で生まれるものを半々ずつくらいで表現している気がします」とも語る。
最後に“原作を読みまくった”という彼女に、透役の道枝についても尋ねてみた。「役とめちゃくちゃリンクしていると思います。原作を読みながら『道枝くんだ!』と思う箇所がいくつもありました。道枝くんはすごく心が綺麗で、純粋で真っ直ぐな方なので、優しくてスレていない透ととても重なりますね。スラッとしている、という外見も原作から受ける印象に近いなと思いました。ぴったりですよね」と福本は答え、軽やかな足取りで紀伊國屋書店新宿本店をあとにした。
取材・文/山田 健史