「怪盗クイーン」シリーズ原作者のはやみねかおる、20年目にして明かす制作秘話「なにを盗ませるかいつも悩みます」

インタビュー

「怪盗クイーン」シリーズ原作者のはやみねかおる、20年目にして明かす制作秘話「なにを盗ませるかいつも悩みます」

「クイーンは、まだ自分にも見えてないところがある」

もともと作品同士で世界観や登場人物がクロスオーバーすることが多いはやみね作品。何度か作品でクイーンと共演している「名探偵夢水清志郎事件ノート」シリーズの主人公、名探偵の夢水清志郎や、トルバドゥールに搭載されている人工知能RDの生みの親である、倉木博士のカメオ出演もファンの心をわしづかみにしたに違いないが、はやみねも「遊び心を持って作ってくださった」と感激しきりだ。

アルマーニのスーツをビシッと着た刑事・岩清水慎太郎など、シリーズお馴染みのキャラクターたちが登場!
アルマーニのスーツをビシッと着た刑事・岩清水慎太郎など、シリーズお馴染みのキャラクターたちが登場![c]はやみねかおる・K2商会・講談社/「怪盗クイーン」製作委員会

ちなみに夢水清志郎というキャラクターは、はやみね先生の夢に現れたという誕生秘話はファンの間ではよく知られているところだが、どんなふうに登場したのだろうか?
「夢水は、自分が20歳のころ、夢の中に出てきて、その時に事件を2つか3つ片付けていったんです。その時に『自分は名探偵だから、自分のことを書け』と言われたので、名前や外見は全部そこからとったから、ものすごく楽にできあがったキャラクターです。だから、なにも迷いなく全部書けましたが、そこから長い付き合いとなりました。それで、プロの作家となって書いていくうちに、名探偵には怪盗というライバルが欲しいと思って書いたのが、クイーンです。夢水とは対照的に、性別不明、年齢不詳で、初めて登場した段階でわかっていたのは、お母さんのことだけです。ずっと書いてきたなかで、ようやく少しずつわかってきたっていう感じですが、まだ自分にも全部は見えてないところがあります」。と、20年の時を経ていまだ作者自身もつかめない、魅惑的なクイーンというキャラクターの誕生も述懐する。

「K2商会先生以外の方がイラストを描いていたら、どうなっていたかな」

クイーンのパートナーであり、本作でもクールな魅力を遺憾なく発揮しているジョーカーについては「クイーンというキャラクターにはパートナーがいるかなと思い、トランプの“クイーン”だとしたら、切り札に当たる“ジョーカー”がいいなと思ってそう名付けたんです。クイーンは彼を友達だと言っていますが、『いや、僕は仕事上のパートナーです』と言い張るようなキャラになりました」と解説。これはもはやファンにとってお決まりのやりとりで、本作でもしっかりと描かれている必見シーンと言えるだろう。

【写真を見る】“はやみねチルドレン”歓喜!シリーズ誕生から20年にして映画化を果たした『怪盗クイーンはサーカスがお好き』
【写真を見る】“はやみねチルドレン”歓喜!シリーズ誕生から20年にして映画化を果たした『怪盗クイーンはサーカスがお好き』[c]はやみねかおる・K2商会・講談社/「怪盗クイーン」製作委員会


「怪盗クイーン」シリーズでは、K2商会のイラストも欠かせない存在だが、どんなやりとりを経て作り上げているのかも気になるところだ。
「僕は文章なら書けるけど、ビジュアル的なものは全然浮かばないタイプの人間です。だからキャラクターについてはK2商会先生がイラストでA案、B案、C案…などを出してくれて『どれが一番近いですか?』と聞いてくれて、そこから固めていきます。そういう意味では、K2商会先生以外の方が描いとったらどうなっていたかと思いますし、先生には本当に助けられてます。特に2作目の『怪盗クイーンの優雅な休暇』を書いていた時は、身内の入院などで半年以上、締め切りを伸ばしてくださいということで、K2商会先生が途中までの原稿を読まれて、先にキャラを描いてくださったんです。僕はそれを基に後半の原稿を描けたのですごく楽でした」と、まさに二人三脚で「怪盗クイーン」シリーズを作り上げてきた、K2商会への感謝も述べた。

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