異様なまでの臨場感と恍惚をもたらす『エルヴィス』、少しだけ大人になったアウトドア系ガールズストーリー『ゆるキャン△』など週末観るならこの3本!

コラム

異様なまでの臨場感と恍惚をもたらす『エルヴィス』、少しだけ大人になったアウトドア系ガールズストーリー『ゆるキャン△』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、伝説のロックアーティストの人生に迫る音楽映画、イーサン・ホークが連続誘拐魔を演じるスリラー、大人になった”キャンプ女子”たちが「キャンプ場を作ること」に挑戦する劇場アニメの、登場人物の感情が胸に迫る3本。

観ているこちらに異様なまでの臨場感と恍惚をもたらす…『エルヴィス』(公開中)

デビューから最盛期までのエルヴィスを演じ切った(『エルヴィス』)
デビューから最盛期までのエルヴィスを演じ切った(『エルヴィス』)[c]2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

キング・オブ・ロックンロールと呼ばれ、音楽だけでなくあらゆるカルチャーに多大な影響を与えたエルヴィス・プレスリー。人々を熱狂させつつ、42歳で逝った彼の短い生涯を描く。少年時代に黒人音楽の洗礼を受け、挑発的なステージで観客を興奮のるつぼに陥れる才能を開花。生涯のマネージャーとなったトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)との絆や確執などを通し、なぜエルヴィスがいまもカリスマとして語り継がれているのかが鮮やかに伝わってくる。

圧巻なのはエルヴィス役、オースティン・バトラーのパフォーマンス。彼自身の歌声が使われたナンバーもあり、当時のエルヴィスの映像と比べても再現度は完璧。むしろ本人以上に熱くアピールするシーンもあるほど!監督は、きらびやかな美術や、めくるめくテンポの映像が大好きなバズ・ラーマン。我を忘れる観客の姿や、エルヴィスの脳裏に去来する思い出が怒涛のごとく重なっていくステージのシーンは、観ているこちらに異様なまでの臨場感と恍惚をもたらす。音楽映画として極上の仕上がりで、ラストは感涙にむせぶ人も多いことだろう。(映画ライター・斉藤博昭)

持ち前のほのぼのさで、日々の疲れを癒してくれる…『ゆるキャン△』(公開中)

キャンプを通じて出会った5人が、社会人となり再びキャンプでつながる映画『ゆるキャン△』
キャンプを通じて出会った5人が、社会人となり再びキャンプでつながる映画『ゆるキャン△』[c]あfろ・芳文社/野外活動委員会

キャンプブームの火付け役となったあfろ原作のアウトドア漫画「ゆるキャン△」。大人気となったテレビアニメ版から発展する形で、劇場用映画となってついに公開。
物語の舞台は、高校生時代を舞台にしているテレビシリーズから数年後。高校時代に野クル(野外活動サークル)でともに過ごした仲間たちも社会人となっていた。そんなある日、名古屋で小さな出版社に就職した志摩リン(声:東山奈央)のもとに、高校時代の友人である大垣千明(声:原紗友里)から連絡が入る。千明は山梨の観光推進課で数年前に閉鎖された施設の再開発に関わっていた。広大な土地の使い方を問われ、リンが「キャンプ場にでもすればいいじゃないか」と言ったことがきっかけとなり、かつてともにキャンプを楽しんだメンバーが集まり、自分たちでのキャンプ場開発をスタートさせる。

離れていた仲間たちが集まり、高校時代の気楽さとは違う、仕事と趣味的な活動を両立させる姿がゆったりと描かれていく。少女から少しだけ大人になった登場人物たちの成長した姿は、若い働く世代には仕事以外の大切なものについて、いい大人にはかつての若かった頃の気持ちを思い出させてくれる。少しだけ大人になったアウトドア系ガールズストーリーは、持ち前のほのぼのさで、日々の疲れを癒してくれるだろう。(ライター・石井誠)


いろんな要素を見事にさばいて観客を引き込んでいく…『ブラック・フォン』(公開中)

誘拐された兄と、予知夢を見る妹が協力しあいながら誘拐魔からの逃走を図る『ブラック・フォン』
誘拐された兄と、予知夢を見る妹が協力しあいながら誘拐魔からの逃走を図る『ブラック・フォン』[c] 2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

監督は、『エミリー・ローズ』(05)、『ドクター・ストレンジ』(17)のスコット・デリクソン。製作を、『ゲット・アウト』(17)、『ハッピー・デス・デイ』(17)、『アス』(19)などのブラムハウス・プロダクションズ。そして原作は、スティーヴン・キングの息子ジョー・ヒルの短編「黒電話」。期待値を上げずにいられない布陣にして、全く期待を裏切られない快作が飛びだした。

舞台は1978年、コロラド州のとある町。子どもの連続失踪事件が頻発し、町には子どもを捜すビラが何枚も貼られている。やがて魔の手は主人公、内気な少年フィニー(メイソン・テムズ)へも。下校中、黒い風船を持ったマジシャンに声を掛けられたフィニーは、一瞬の隙に黒塗りのバンに押し込まれる。気づくと、地下室に監禁されていた。部屋には、断線した黒電話が一台。やがて、つながらないはずの黒電話が鳴り響き――。

荒んだ父親の暴力に怯える、母を亡くしたフィニーと霊感の強い妹(マデリーン・マックグロウ)。学校でのイジメや、先に失踪した男の子たちなど、家庭環境や学校での日常の描き込みも絶妙だ。予知夢、亡霊、サイコパス。一つ間違えばトンデモ作品に転がるところを、いろんな要素を見事にさばいて観客をどんどん引き込んでいく。誘拐犯を演じるイーサン・ホークの怪演も見ものだが、幼い兄妹の初々しく凛々しく闘う姿、強い想いにむんずと心を掴まれる。ハラハラし通しで心臓バクバク、いやはや怖くて大満足!(映画ライター・折田千鶴子)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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