アカデミー賞監督が『カメラを止めるな!』をリメイクした理由とは?「ぜひ監督させてほしいと願いでた」

インタビュー

アカデミー賞監督が『カメラを止めるな!』をリメイクした理由とは?「ぜひ監督させてほしいと願いでた」

「自分にとってものすごくパーソナルな映画になった」

レミーのもとに、日本で大ヒットしたゾンビ映画をカメラ1台でワンカット撮影し、生放送してほしいといった無茶なオファーが入る
レミーのもとに、日本で大ヒットしたゾンビ映画をカメラ1台でワンカット撮影し、生放送してほしいといった無茶なオファーが入る[c]2021 - GETAWAY FILMS - LA CLASSE AMERICAINE - SK GLOBAL ENTERTAINMENT - FRANCE 2 CINÉMA - GAGA CORPORATION

一番、苦労したシーンを尋ねると「そりゃあ、最初の長回しをしたワンカットです」とおちゃめに笑ったあとで「それ以外だと、最後の人間ピラミッドのシーンです。あのシーンは、いわゆるサーカスの曲芸のように見えるピラミッドにはしたくなくて。『メデュース号のいかだ』(Le radeau de la meduse)という絵画のようなイメージにしたかったので、それをファーストの助監督に見せました。その結果、イメージ通りにできあがり、渾身のカットとなりました。役者さんたちは本当につらそうで、なかでも一番下で支える人たちは、叫び声をあげました。だから劇中に入っているのは、演技ではなくリアルな叫び声です」と手応えを口にする。

また、アザナヴィシウス監督は本作について「撮り終えてから、僕がおもしろいと感じたのは、すごくオリジナルに忠実なものを作ったはずなのに、結果的に自分にとってものすごくパーソナルな映画になったということです。奇妙に聞こえるかもしれませんが、本当にそう感じました」と感慨深い表情を見せる。

5週間ものリハーサルを行い臨んだワンカット撮影は必見!
5週間ものリハーサルを行い臨んだワンカット撮影は必見![c]2021 - GETAWAY FILMS - LA CLASSE AMERICAINE - SK GLOBAL ENTERTAINMENT - FRANCE 2 CINÉMA - GAGA CORPORATION

「本作を観た多くの人が、スタッフやキャストの間でのすばらしいシナジー効果を感じると言ってくれるのですが、人間ピラミッドはその(みんなで1つになって力を合わせて作るという)感覚を完全に体現してくれたと思います。それはオリジナル版でも、非常に感動的なシーンで、僕自身もすごく心を動かされました。ただリメイク版はその流れに加え、パンデミック禍の撮影であったということで、また別の色合いの感動があふれ出たのかもしれません」。

「映画を作れることがうれしくて仕方がなかったです」

監督は改めて本作の制作時を振り返り「脚色を手掛けたのは、フランスが最初のロックダウンになったころです。撮影時もまだフランスでは外出禁止時間があり、どこに行ってもパンデミックに関する恐怖心や不安があるような状況でした。そんななかで、僕たちは映画の仕事に戻ることができただけでなく、喜びや幸福感にあふれる作品を作るチャンスを与えられ、まるで休みに入った学生のようにウキウキしていました」とうれしそうに目を細める。


フランス版リメイクならではのユーモアもたっぷり詰め込まれている
フランス版リメイクならではのユーモアもたっぷり詰め込まれている[c]2021 - GETAWAY FILMS - LA CLASSE AMERICAINE - SK GLOBAL ENTERTAINMENT - FRANCE 2 CINÉMA - GAGA CORPORATION

「現場に飛び込んだ時、映画を作れることがうれしくて仕方がなかったです。第1部のワンカット長回しがかなり複雑だったために、メインとなる7人の役者さんとは5週間もリハーサルを行いましたが、だからこそ劇団的なチーム感が強まりました。その後スタッフやほかのキャストが加わってくれた時も『ああ、みんなで一緒に作っているんだな』と強く感じました。それはきっと映画を観てもらえれば、観客にも伝わるんじゃないかと思います」。

撮影秘話に加え、オリジナル版への称賛と、あふれる映画愛を語ってくれたアザナヴィシウス監督。完成した映画を観た『カメラを止めるな!』の上田監督は「本作は、紛れもなく“カメ止めであり”、同時に"カメ止めでないもの”に仕上がっていました。作品内にカメ止めそのものを取りこみつつ、新たにカメ止めを再現する。まさに“カメ止め的”としか言いようのないリメイクになっていました」と絶賛している。ぜひスクリーンで、秀作に仕上がったリメイク版を鑑賞後、改めてオリジナルの『カメラを止めるな!』も観ていただきたい。

取材・文/山崎伸子

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