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「ニュースとは違う形でウクライナに触れてほしい」前TIFFディレクター・矢田部吉彦がチャリティ上映「ウクライナに寄せて」の意義を熱弁

インタビュー

「ニュースとは違う形でウクライナに触れてほしい」前TIFFディレクター・矢田部吉彦がチャリティ上映「ウクライナに寄せて」の意義を熱弁

“若手映像クリエイターの登竜門”として知られる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が、7月16日(土)から7月24日(日)までの9日間にわたってスクリーン上映と、7月21日(木)から7月27日(水)までの7日間のオンライン配信とのハイブリッド形式で開催される。国際&国内コンペティションに新世代の才能が集結したほか、今年は映画でウクライナを支援すべく企画されたチャリティ上映「ウクライナに寄せて」を実施。過去に本映画祭の国際コンペティションに選出されたウクライナ映画『この雨は止まない』(20)と『ラブ・ミー』(13)がリバイバル上映される。

「いい映画を観ながら、世界の状況に対する理解を深めることができる。それは映画の持っている最も大きな力のひとつ」と心を込めるのは、前東京国際映画祭プログラミング・ディレクターで、「ウクライナ映画人支援上映 有志の会」の代表でもある矢田部吉彦。今回上映される2作品の見どころを解説してもらうと共に、いま感じている“映画の力”について語ってもらった。

矢田部吉彦がウクライナ映画の見どころと”映画の力”について熱く語る
矢田部吉彦がウクライナ映画の見どころと”映画の力”について熱く語る

「ドキュメンタリーは客観的に観てしまうことが多いが、『この雨は止まない』は感情移入できるドラマ」

「『この雨は止まない』と『ラブ・ミー』は、まったく作風の違う映画。この2本を並べるのがおもしろい」と選定にうなる矢田部。『この雨は止まない』は主人公の青年アンドリーが、シリア内戦から逃れてウクライナに渡り、散り散りとなった親族を訪ね、旅を続ける姿を映しだしたドキュメンタリー作品。アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭で、ファーストアピアランス部門の作品賞を受賞している。

青年アンドリーの旅と共に、戦争の残酷さを映しだす『この雨は止まない』
青年アンドリーの旅と共に、戦争の残酷さを映しだす『この雨は止まない』[c]Square Eyes Film

「すばらしい作品」と口火を切った矢田部は、「本作が受賞を果たしているアムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭は、世界でも重要で、一番大きなドキュメンタリー映画祭と言えます。この受賞は、本作がすばらしい作品であるというお墨付きになっています」と太鼓判。

「制作されたのは、今年勃発した戦争が本格化する前となりますが、本作を観ればすでにウクライナが難しい状況になっていることが、よく伺えます。ロシアからシリアにかけた地域の情勢までが見えてくる内容ですが、本作がすごいのは、戦争によって一家離散してしまったひとつの家族を追いかけていくことで、それらの地域の現実が浮き彫りになってくるところ。まず家族の人間ドラマとして見応えがありながら、これがドキュメンタリーであるということは驚異的なことです。非常に丁寧に作られた作品だなと思います」と時間をかけて、アンドリーとその家族を捉えたアリーナ・ゴルロヴァ監督の手腕に惚れ惚れとしつつ、「アンドリーは、シリアの戦禍を離れてウクライナに渡るわけですが、そこでも戦争が起きてしまう。悲痛としか言えない運命を抱えており、僕は彼に感情移入して観ていました。ドキュメンタリーって客観的に観てしまうことも多いですが、“感情移入できるドラマである”ということが、この映画のユニークなところだと思います」と没頭して観たという。


現地の状況をより身近に感じさせられる『この雨は止まない』
現地の状況をより身近に感じさせられる『この雨は止まない』[c]Square Eyes Film

止まない戦争の悲劇を、11章の章立てで表現した構成も見事だ。矢田部は「本作で映しだされる地域は常に不安に包まれていて、いまでもそれが続いているということは、本当につらいこと。我々は“戦争が起きている”ということをニュースなどで聞いていますが、こういった作品を観ることで、そこには生身の人間が生きているんだと、現地の状況をより身近に感じられる。他人事ではなく、我が事のように感じることができる」としみじみと語る。


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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022 チャリティ上映「ウクライナに寄せて」
■スクリーン上映
『この雨は止まない』
日程:7月22日(金) 17:00〜18:42
会場:SKIPシティ 多目的ホール
『ラブ・ミー』
日程:7月20日(水) 13:50〜15:20
会場:SKIPシティ 多目的ホール
■オンライン配信
配信期間:7月21日(木) 10:00~7月27日(水)23:00
URL:http://www.skipcity-dcf.jp/
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