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「ニュースとは違う形でウクライナに触れてほしい」前TIFFディレクター・矢田部吉彦がチャリティ上映「ウクライナに寄せて」の意義を熱弁

インタビュー

「ニュースとは違う形でウクライナに触れてほしい」前TIFFディレクター・矢田部吉彦がチャリティ上映「ウクライナに寄せて」の意義を熱弁

「いい映画を観ながら、自然と、世界の状況に対する理解を深めることができる」

前東京国際映画祭プログラミング・ディレクターとして、世界中のあらゆる作品を日本の観客に紹介してきた矢田部。「映画ってどんどん更新されていくもので。どれだけ観ても、発見がなくなることはない」と笑顔を浮かべ、「その国の背景や断片のようなものが映り込んでいるものは、やはりいい作品だと判断できる理由になりますね。そういった意味でも『この雨は止まない』と『ラブ・ミー』はものすごく見応えのある映画」とキッパリ。

いまウクライナ映画の上映会が行われる意義については、どのように考えているだろうか。「僕は、それぞれの国や地域の状況、文化について知識を得るのに、映画ほど優れた手段はないと思っていて。お勉強のために映画を観るなんて、あまりおもしろいものではありませんが、いい映画を観ながら、自然と、世界の状況に対する理解を深めることができるということは、映画の持っている最も大きな力のひとつだと感じています。今回の『ウクライナに寄せて』はチャリティ上映だと伺っていますが、こうやって各映画祭がウクライナ映画を上映していくことは、非常に重要なこと」と映画を通して理解を深めることの重要さを伝える。


『ラブ・ミー』はラブストーリーを通して、現地の社会問題も映しだしていく
『ラブ・ミー』はラブストーリーを通して、現地の社会問題も映しだしていく

矢田部自身、「ウクライナ映画人支援上映 有志の会」の代表としてウクライナ映画の上映会を行なっており、「ロシアとウクライナの戦争が始まって数か月が経ち、次第にそういったニュースに慣れてしまっている部分を感じている人もいると思います。“慣れてしまう”というのは、とても心配なこと。ぜひニュースとは違った形で、また別のウクライナに触れてほしいと感じていますし、“映画によって、いかに人々の意識を喚起していくことができるか”というのは、我々映画人に課された宿題ではないかと思っています」と使命感を握りしめる。

ウクライナ映画の火を灯し続けるべく、現地の映画人たちは「困難な状況のなかでも、なんらかの形で、映画を継続させるための活動をしている」という。矢田部は「今年のカンヌ映画祭では、ウクライナの映画プロデューサーに会って話をする機会もありました。役者さん、脚本家など、従軍されている映画人も多く、その経験を映画に反映させていこうと考えている人もいますし。また『アトランティス』のヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督は、キーウに留まっていまの状況を映像に撮っています。ウクライナの人たちは、タフだなと思います」と感心しながら、日本からウクライナ映画の上映会を通して彼らに思いを馳せることも、「それ自体が、ウクライナ映画人への支援になるはず」と力強く語る。

「作品に接して刺激を受けるということは、映画祭でしかできない体験」

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」の特徴は、「国際コンペと国内コンペを持っている映画祭。それぞれの新作を両方ともきっちりと紹介する国際映画祭は、日本国内でも少ない。毎年プログラムも充実していますし、とても貴重な存在だと思っています」と分析した矢田部。

映画祭の魅力については、「これだけ映像があふれかえっている世の中。どんな作品を観たらいいのか、戸惑うこともありますよね。そんななか映画祭では、ある見識に基づいたセレクションによって、ある程度のクオリティが担保された作品が上映される。“これを観れば、世界の映画の流れが見える”という作品を紹介することこそ、映画祭の大きな役割だと感じていますし、そういった作品を楽しめることは参加する方にもメリットのあることだと思っています。また商業公開はされないけれど、芸術的に優れている作品を堪能できるのも、映画祭のよさ。“そういった作品に接して刺激を受ける”ということは、映画祭でしかできない体験だと思っています」と語った。

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」でチャリティ上映「ウクライナに寄せて」が実施される
「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」でチャリティ上映「ウクライナに寄せて」が実施される

そして「まずは気楽に映画祭を楽しんでほしいですね。チャリティ上映の『ウクライナに寄せて』についても、堅苦しく考えずに、“まずは映画を楽しもう”という姿勢で観に行っていいと思うんです。いい映画を観て楽しんで、そのうえできっとなにかを得られる2作品。ぜひ期待していただきたいです」と呼びかけていた。

取材・文/成田おり枝


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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022 チャリティ上映「ウクライナに寄せて」
■スクリーン上映
『この雨は止まない』
日程:7月22日(金) 17:00〜18:42
会場:SKIPシティ 多目的ホール
『ラブ・ミー』
日程:7月20日(水) 13:50〜15:20
会場:SKIPシティ 多目的ホール
■オンライン配信
配信期間:7月21日(木) 10:00~7月27日(水)23:00
URL:http://www.skipcity-dcf.jp/
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