出産、女性の戦い、父と娘…「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」のショーランナー2人が明かす物語のテーマとは?
「第1話で起きる母の死が、このドラマ全体を引っ張ることになる」(サポチニク)
――ジョージ・R・R・マーティンは、どれくらい製作にかかわったのでしょうか?ライアンを直々に抜擢したくらいですから、今作にかなり情熱を持っているものと思われますが。
コンダル「製作の初期段階で、ジョージはとても深くかかわっています。彼が作り上げた300年の歴史のどの部分を舞台にするのかを決め、第1話の内容や、そこからどう話を広げていくかについて、僕らは語り合いました。そんななかで、彼は僕をより信頼してくれるようになりました。そしてミゲルがやってくると、ジョージはミゲルのこともすごく信頼してくれました。『ゲーム・オブ・スローンズ』を監督した人たちのなかでも、ミゲルはジョージの一番のお気に入りだったんです。ジョージは、僕らが正しいプランのもとに、いい方向に向かっていると感じてくれたようです。僕らは僕らがなにをやっているか、ジョージにまめに伝えるようにしました。これは彼が生みだした世界なんだから。完成したドラゴンのデザインを送ると、ジョージは感激してくれて、びっくりマークがたくさんついたテキストメッセージをくれました。彼が興奮してくれたおかげで、僕らはますますやる気がでました。原作者とこんなふうに深く交流できるのは、素敵なことだと思います」
――脚本に関して、マーティンが意見をすることはありましたか?
コンダル「僕らは脚本を送って、そのあとの筋書きも彼に伝えていました。それについて彼が質問をしてきたり、なにかアイデアをくれたりすることはありました。それはとても助けになりました。彼は非常に優秀なライターであり、この物語を書いて25年もの年月が経っていても、自分が作ったものをしっかり覚えていて、深い知識を持っています。ジョージと話すたびに、僕は学びを得ます」
――今作の舞台は現代社会に生きる私たちとは異なる時代、異なる場所です。私たちの世の中にもつながる社会的な要素も盛り込まれているのでしょうか?
サポチニク「第1シーズンを製作するなかで、僕らは、なによりもまず家族の物語なのだというルールを決めました。とりわけ、父と娘の物語です。編集作業をしている時も、そこから離れないように意識をしていました。この父と娘に、観客は共感できると思います。父は娘に十分かかわっていません。王として立派な仕事をしようともするのですがが、そちらも必ずしもうまくできていません。そしてこのドラマで娘に起こることは、すべて母の死から始まります。第1話で起きる母の死が、このドラマ全体を引っ張ることになるんです。しかも、母は普通に死んだのではありません。父によって殺されたのです。それはいったい娘にどんな影響を及ぼすのだろうか?親の行動によってトラウマを抱え、ずっと悩まされ続けてきたという人はいるはずです。僕らはそこを軸にしたストーリーを書こうと決めました。話を進めていくなかでも、そこが常に基盤になっています」
――キャスティングについて語っていただけますか?今作には数多くのキャラクターが登場します。どのように役者を選んでいったのでしょうか?
コンダル「今作のキャスティングは、僕にとってこれまでで一番楽しいものでした。時間をたっぷりとかけることができたからです。パンデミックのせいで、当時、映画やドラマの撮影はすべて中断していました。いつ再開できるのか誰にもわからないという不安な状況で、多くの俳優が仕事を求めていたんです。僕らには、じっくり検討する余裕がありました。それに、キャスティング・ディレクターのケイト・ローズ・ジェームスはとても優秀な人。彼女は、舞台を中心に活動する役者さんなど、必ずしも有名でなくても、深い演技ができる人たちを連れてきてくれました。さらに、その役にどの役者が最もふさわしいかだけではなく、キャスト全体を見てバランスを考えてくれました。今作は家族の物語で、登場人物たちは血でつながっています。そして僕らは幸いにも、メインの登場人物全員について、第一希望の役者を獲得することができました。そのことにとても満足しています」
取材・文/猿渡由紀
8月22日(月)10時よりU-NEXT独占配信