観始めたらやめられない!韓国クライムドラマの新境地「模範家族」が持つ魅力に迫る

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観始めたらやめられない!韓国クライムドラマの新境地「模範家族」が持つ魅力に迫る

Netflixのオリジナルドラマシリーズ「模範家族」が、8月12日の配信から順調に注目を集めている。8月16日のNetflixデイリーランキングは「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」「梨泰院クラス」に続き3位、韓国では1位となった。韓国には、過去にも優れたクライムドラマが多かったが、「模範家族」はそんな得意ジャンルをさらに開拓した印象だ。今回は、好発進した本シリーズの面白さに迫りたい。

一気見必至!予測不可能な展開と後を引くエンディング

家族のため、後戻りできない“裏の仕事”に手を染めるドンハ
家族のため、後戻りできない“裏の仕事”に手を染めるドンハ[c]Netflix

パク・ドンハ(チョン・ウ)は平凡な大学講師。離婚を迫る妻ウンジュ(ユン・ジンソ)のために何とか教授になろうと財産をつぎ込んで口利きを頼むが、思ったような成果は得られない。八方塞がりになったある帰り道、身元不明の二人の死体と大金を乗せた車を発見。ドンハは思わず金を奪い、死体を庭に埋めてしまう。一方、麻薬組織のNo.2グァンチョル(パク・ヒスン)は、消えた金と組員を探す中でドンハに近づいていく。そんな彼らを、警察署麻薬捜査チームのジュヒョン(パク・ジヨン)は追い詰めようとしていた。

「台本をもらってから手放せず、一気に読んだ。1話を見ると最後まで気になってしまうはず」とチョン・ウが話したように、過去作「10TEN/特殊事件専門担当班TEN」も高評価を受けたイ・ジェゴンによる緻密な脚本は、飽きさせない展開と毎回吸引力のあるエンディングが特徴だ。謎の死体と大金をめぐるドンハ、グァンチョル、ジュヒョンという三者三様の切実な事情に、裏の顔を持つ周辺人物たちの思惑が絡み化学反応を起こすストーリーは、どこに着地するか予測ができない。だからこそ、ラストまで好奇心を刺激し続けてくれる。気弱な“模範市民”のドンハという主人公も共感を誘う。家族を守るという普遍的な目的のために大きく道を踏み外し、危険な仕事に手を染めてしまう彼の行く末に、視聴者は自らを重ね合わせ緊張感を共有するのだ。

ストーリーに膨らみを持たせた俳優の力

「両面性のあるドンハが次第にモンスターになっていく」と分析して役に臨んだチョン・ウ
「両面性のあるドンハが次第にモンスターになっていく」と分析して役に臨んだチョン・ウ[c]Netflix

ドンハ役のチョン・ウは、ドラマ「応答せよ1994」の兄貴肌の優しい医大生や、『偽りの隣人 ある諜報員の告白』(20)の強い愛国心を持つ諜報員役など、あらゆるジャンルの作品で活躍してきた。共演陣も認めるほど“練習の虫”だという彼は、「真面目な人物だが、心の中に両面性を持っている」とドンハを分析し、頼りない男を表現するために減量で自身を追い込んだという。交通違反すらしたことがないドンハが、極限状態で次第に内面が怪物のように変わっていく姿には凄味を感じさせる。

組織のために忠誠を尽くしてきたが、突如その立場が脅かされそうになるグァンチョル
組織のために忠誠を尽くしてきたが、突如その立場が脅かされそうになるグァンチョル[c]Netflix

グァンチョルに扮したパク・ヒスンは、『The Witch/魔女』(18)やドラマ「マイネーム: 偽りと復讐」といった作品で見せるハードボイルドな横顔が魅力的な実力派俳優だ。本作では、忠誠を誓った組織から抗争で排除される孤独を、虚無感に満ちた眼差しなどで説得力を持たせた。彼は「極悪人のドラマは多くが復讐と裏切りから始まるが、今回はそれよりも、一度も愛されていない人物が寂しさによってどのように悪人に変わっていくかを見せたい」と明かす。これまでの犯罪ドラマで描かれてきたヒールとは一味違うグァンチョルというキャラクターで、パク・ヒスンはさらに役者の格を上げた。

ドンハの不甲斐なさを責め立てるウンジュだが、彼女にも隠し事があった
ドンハの不甲斐なさを責め立てるウンジュだが、彼女にも隠し事があった[c]Netflix

ドンハの妻ウンジュを演じたのは、『オールド・ボーイ 4K』(03)の復讐者ウジンの姉を演じ、その清新さがいまも鮮烈な印象を残しているユン・ジンソ。厳しい生活であることにリアリティを出すため、撮影にはほぼノーメイクで臨んだ。また、ウンジュが翻訳家として苦労しながら働いているという立体的な人物設定は、役柄を深く掘り下げて完璧に自分のものとしたユン・ジンソの提案によるものだったという。夫に期待することをあきらめ崩壊寸前な家庭で弱々しく見えたウンジュだが、苦境に立たされると躍動感を得てドンハをリードし、グァンチョルにも屈しない大胆さを見せる。状況が変わるのをただ待つだけではない現代的な女性の姿は、ドラマの中で特に精彩を放った。

かぞくのように一心同体だった警察組織。しかし、ジュヒョンはスパイの存在に気づき始める
かぞくのように一心同体だった警察組織。しかし、ジュヒョンはスパイの存在に気づき始める[c]Netflix

警察署麻薬捜査チーム長ジュヒョンには、主にミュージカルで才能を発揮してきたパク・ジヨン。キム・ジヌ監督がオーディションで見出した逸材だ。麻薬組織を検挙するためのある計画が思わぬところで失敗し、焦燥感に駆られながら捜査を続けるジュヒョンについて「彼女の強さを示すのではなく、心に抱いている苦悩だけを考えて演じた。見た目としては平凡さを追求した」と、役作りへのこだわりを語った。

ほかにも、『キングメーカー 大統領を作った男』(21)でソル・ギョング扮するキム・ウンボムの生真面目な秘書役を演じたキム・ソンオや、「賢い医師生活」にも出演しているチェ・ムソンといった名バイプレイヤーが顔を揃えた。彼らの演技にキム・ジヌ監督は「それぞれが自分の役割を自分だけのやり方で表現してくれた」と感謝を伝える。それぞれ異なるキャラクターを演じて火花が炸裂するような熱演を見せたベテラン俳優たちのアンサンブルが、ドラマの完成度を高めた。

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