「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」ターガリエン家の王位継承争いのキーマン、ヴェラリオン家の夫婦を演じるキャストを直撃!
「『歴史は血を覚えていない。歴史が覚えているのは名前だけだ』というセリフがあります」(トゥーサント)
――あなたたちのキャラクターは、このあと、この一族のごたごたに大きく関与していきそうな気がします。このドラマはとても政治的になっていくのでしょうか?
トゥーサント「ええ、かなりややこしい状況になっていきます。この夫婦は、自分たちがアウトサイダーであるように感じています。シリーズの後半に、コアリーズが、『小評議会のメンバーのなかで、自分の力で財を成したのは自分だけだ』と言うシーンがあります。彼はなにもないところからのし上がってきたのです。誰かから財産を与えられたわけではありません。イギリスみたいなものですね。金を稼ぐことはできても、貴族の仲間入りをすることはできないんです。それもあって、妻のレイニスに共感するんだと思います。王位を継承するはずだったのに奪われた妻も、アウトサイダー。妻のことは純粋に愛していますが、その要素もあるんです。彼は自分の家族が権力を持てるようにしたいと願っています。それが彼のモチベーション。そして、それが、このシーズンのストーリーをリードするのです。彼は自分のレガシーを築きたいんです。彼のセリフに、『歴史は血を覚えていない。歴史が覚えているのは名前だけだ』というものがあります。彼には大きな野心があるんです」
――大規模な作品ですが、撮影はいかがでしたか?
ベスト「すごく大規模な一方で、柔軟性もありました。脚本に、私が夫の横で立っているというシーンがいくつかありましたが、あるシーンで、私は、レイニスはドラゴンに乗るタフな女性だから、ちょっと違う気がすると伝えました。そのシーンに関して、制作人は協議してくれて、結果、レイニスはドラゴンに乗ってどこかに行き、帰ってきたという設定に変えられました。その後、実際にやってみたのですが、まだなにかが欠けていたんです。すると彼らはそのシーンのために、私に新たな衣装を作ってくれたんです。ドラゴンに乗って帰ってきたレイニスは、その素敵な服を身にまとっているんです。そういうことがすぐにできるなんて、すごいと思いましたね」
――このシリーズは大ヒットが予想されています。そのおかげでより有名になることについて、どう考えますか?
トゥーサント「僕のキャリアで、これは大きな瞬間かもしれないと感じたことは、これまでにも何度かありました。初めてナショナルシアターに出た時や、初めて大作映画に出た時など。でも、次の日はまたいつものように洗濯したりゴミ出ししたりしなきゃいけないんです。普通の日常が待っています。それに、街でランチを食べたりしている時に知らない人が寄ってくるというような状況に、僕は魅力を感じません。もっとも、僕は今作でカツラとひげをつけていて別人みたいに見えるから、大丈夫でしょうけれど」
ベスト「これまで私たちは、いわばバブルの中にいました。撮影中はただ毎日仕事をしていただけで、そんなことは考えませんでした。でも、コミコンで情熱的なファンの人たちにたくさん会って、初めて(周囲の期待に)気づきました。私はSNSをやらないので、ほかのところでなにが起こっているのかを知らないんです。そのほうが健全だと私は思っています。特に若い人は気をつけるべきです。あまりに情報があったり、自分についてなにが言われているのかを知ったりするのは有害だと。私は、あえてそこに入っていかない選択をしていますよ」
取材・文/猿渡由紀