北米ランキングは『The Invitation』が異例の低興収V!ジョージ・ミラー最新作は7位スタート
8月最後の週末となった先週末(8月26日から28日)の北米興収ランキングは全体の興行収入が5200万ドルと、1月以来の低水準。しかも8月の月間累計興収は4億6163万ドルで、昨年よりも5000万ドル近く回復したとはいえまだまだコロナ禍前の水準には届かず(2001年から2019年までは6億5000万ドル〜10億ドルで推移していた)。映画館への客足そのものは回復した一方で、いまは深刻な作品不足に陥っていることが窺える。この流れはしばらく続くことになるだろう。
そうしたなかで初登場1位に輝いたのは、長編デビュー作『The Light of the Moon』でSXSW映画祭観客賞を受賞したジェシカ・M・トンプソン監督のホラー映画『The Invitation』。3114館で公開され、3日間の興収はわずか680万ドル。3000館以上の規模で公開された作品のオープニング興収としてはワースト39位の成績であり、コロナ禍のような非常時を除けば2003年の9月第1週に公開された『Dickie Roberts: Former Child Star』の666万ドルに次ぐ、稀に見る低興収での1位スタートとなる。
批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば批評家からの好評価の割合はわずか21%。しかもレビュー数はわずか38という、北米No. 1スタートを飾った作品とは思えない状態の『The Invitation』。しかしそれ以上に苦しい出足となったのは、7位に初登場した『Three Thousand Years of Longing』ではないだろうか。こちらは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)のジョージ・ミラー監督の最新作で、イドリス・エルバとティルダ・スウィントンが共演したファンタジー映画だ。
2436館で公開され、興行収入は291万ドル。1館あたりのアベレージで比較すれば、『The Invitation』をも下回るスタートとなり、製作費の6000万ドルの回収は絶望的な状況に。早速「Indiewire」では同作をフックに「42 Great Films That Failed at the Box Office(興行的に失敗した42の偉大な映画)」なる記事を公開したが、「ロッテン・トマト」での批評家からの好評価は74%とインパクト不足。賞レースからは一歩後退したと考えてもよさそうだ。
一方、前週初登場1位を飾った『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』(日本公開中)は5位まで後退したものの、累計興収は3087万ドルに到達し、前作『ドラゴンボール超 ブロリー』(18)の北米興収3071万ドルを上回ることに成功。『劇場版 呪術廻戦0』(21)の北米興収3454万ドルを超える可能性も充分だ。また、公開14週目の『トップガン マーヴェリック』(日本公開中)は、先週の平日は一日も100万ドルを超える興収をあげることができず、29日の月曜日には公開95日目にして初めてデイリー興収50万ドルを下回った模様。
9月は目ぼしい大作映画の公開がほとんどない一方で、現時点で北米歴代興収第3位の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)の追加映像を含む“THE MORE FUN STUFF VERSION”の公開や、13年ぶりの続編に合わせた『アバター』(09)の再上映が予定されている。着々と迫る『トップガン マーヴェリック』の興収7億ドル突破も含め、歴代ランキングの上位に動きがあると期待しておきたい。
文/久保田 和馬