岡田准一&坂口健太郎が語り合う、役柄を超えて感じた“化学反応”「頼りになる相棒でした」
「いま、岡田という駒を使ってどういうアクションができるかを試されたかったのではないかな」(岡田)
――すさまじいアクションの連続でしたが、本作のアクションを作り上げるうえで特に意識したのは、どんなことでしたか?
岡田「原田監督が、『関ケ原』『燃えよ剣』という大作でやりたかったけれどできなかったことを本作でやる、そして、原点回帰としての意味合いも感じていました。監督も70歳になられ、『KAMIKAZE TAXI』を撮った若いころの自分と向き合いながら、いま、岡田という駒を使ってどういうアクションができるか、どういうケミストリーが生まれるのかを試されたかったのではないかな、と。そういう意味からも、事前に決めていたアクションでさえ、現場でどんどん変わっていくことも多かったです。とにかく現場でなにができるかを試されていた、という感じでした」
坂口「確かに、現場自体がいろんなことで流動的でしたよね。常に、いいところをチョイスしながら動いていくというか」
岡田「今回は遊び心を大事にされていましたし、アクションを仕込まず、芝居の延長線上で撮りたいというのが原田監督の特色なので、一連の芝居の流れで出来る殺陣(たて)を考えなければなりませんでした。監督がポロッと言うヒント、『蛇みたいな』とか『一瞬で』とか、『男同士のベッドシーンのように』とか、そういうワードをひも解いて『蛇みたいな動きって、例えばどんな動きだろう』と考えながらアクションを作っていったので、難しかったです。常に戦術が生っぽく、意思が見える殺陣を考えなければなりませんでしたね」
――そういうアクションは、やるほうとしても大変ですよね?
坂口「映像を観て、すごく痛そうだな、と感じました。観ながらつい拳を固めてしまうような、すごく痛みが伝わるアクション。また原田監督が一連でバーッと撮られるので、大変でした。だから本当に疲れるのですが、同時に室岡もそういう時は本当に疲れているだろうと、逆にいい相乗効果になった気がします。また、兼高がいないシーンでも、常に岡田さんが現場にいてカメラ奥で見ていてくれたのが、すごく心強かったし、自分的にも熱量が上がりました。兼高のバディとして成立する人でなければ、というのを一番に頭に置きながら、室岡という人間や目の前のアクションシーンを、どうすれば魅力的に見せられるか考えながらやっていました」
岡田「アクション脳と芝居脳は違うと思うんですね。芝居はワガママにやったほうがいいのですが、アクションは絶対にワガママにやってはいけない。常にカメラワークやカメラ位置、相手の俳優さんのことを考えてやったほうがいい。そのバランスにいつも悩んでいます。それでも、アクションものやろうよと言われると、つい応えてしまうのですが…(笑)」
「役に一瞬なりとも“僕自身”が見え隠れすることが、すごく意味があると思っているんです」(坂口)
――演じた兼高、室岡というキャラクターに対しては、なにか思うところがありましたか。
坂口「僕が演じる以上、役に一瞬なりとも“僕自身”が見え隠れすることが、すごく意味があると思っているんです。兼高と室岡の関係性にも、岡田さんと僕の関係性がリンクするのも感じました。だからカメラが回っていてもいなくても、室岡を形作るということにも、すべてに意味があると感じました。確かに人をスパナで殴り続けるなど、室岡がやっていることは非常に残酷非道なこと。でも彼は目の前のことに、すごくピュアに反応してしまう。その心持ちなど、根本は少し理解してあげたくなるような男の子でもありました。やっていることは酷いけれど、僕だけは肯定してあげたくなる感覚です」
岡田「兼高もダークヒーローのように描かれていますが、実はサイコパスだと思います。好きだったそこまで親しくない知り合いが殺されて、犯人全員惨殺しに行きますから。ピュアすぎますよね。例えばそれが彼の妻や子が殺されたという設定なら、復讐する気持ちも理解しやすいと思いますが、あえてそうしていないのも、原田監督の狙いですよね。ピュアすぎるのは、逆に毒になるというか、ひっくり返って残酷になりますから」
――では最後に、本作にキャッチコピーをつけるとしたら、どんな言葉にされますか?完成前、岡田さんは「唯一の映画」、坂口さんは「セクシーな映画」と表現されていましたが、改めて考えてみてください。
岡田「本作の登場人物全員が、どこかおかしい。だからこそ好き嫌いがハッキリ出る映画だと思いますが、とんでもない映画であることは間違いない。覚悟して観に来てほしいですね。とにかく“全員ヤバイ!”ので」
坂口「前に“セクシーな映画”と言ったのは、終盤のあるシーンが強烈に自分のなかに残っていたから。激しい闘いのあと、土砂降りのなかで兼高が、ある言葉を室岡に言うんです。台本を読んだ時、あんな生っぽく湿度を感じさせるシーンになるとは思っていなかったので…。いま、改めて思うのは、あえて説明を省き観客に委ねている作品だな、ということ。“ものすごい熱量で駆け抜ける、ジェットコースターのような映画”なので、皆さんにも一緒に駆け抜けてほしいです。そして最初は師弟のような関係で始まる兼高と室岡の、その愛情がどこか崩れ、深みにはまっていく瞬間をいろんな風に感じてほしいです」
取材・文/折田千鶴子