銃×少女×日常系コメディ「リコリス・リコイル」の“ユルサ”さと“クール”さに迫る

コラム

銃×少女×日常系コメディ「リコリス・リコイル」の“ユルサ”さと“クール”さに迫る

豊作と言われた2022年の夏アニメも残すところあと数回。ラストに向かって加速していくストーリーに括目しているファンも多いことだろう。各情報サイトでは今クールの人気ランキングも発表されているが、マンガや小説を原作とする作品が上位を占めるなか、数少ないオリジナルアニメとして高い評価を得ているのがA-1 Pictures制作の「リコリス・リコイル」、通称「リコリコ」。クライマックスを間近に控えたいま、改めてその人気の理由を探ってみたい。

【写真を見る】銃器を手に暗躍する少女たちを描きながら、日常系コメディのようなユルサも魅力の「リコリス・リコイル」
【写真を見る】銃器を手に暗躍する少女たちを描きながら、日常系コメディのようなユルサも魅力の「リコリス・リコイル」[c]Spider Lily/アニプレックス・ABC アニメーション・BS11

“銃と少女”の組み合わせに“日常系コメディ”を重ねたクセになるユルさ

リコリスとは、日本の平和と秩序を守るため、銃器を手に暗躍する少女たちの名称。秘密組織DAの命に従って犯罪を企てる者を処分し、犯罪を未然に防ぐのが仕事である。この“銃と少女”の組み合わせは、ことアニメに関しては支持が高く、かつては「ノワール」や「GUNSLINGER GIRL」などのテレビシリーズから熱狂的なマニアを生みだした。もちろんマニアとまではいかなくても、命と向き合う少女たちのハードボイルドな生き様に惹かれたアニメファンは少なくないだろう。

しかし「リコリコ」の場合、従来の銃と少女系とはちょっと違うかもしれない。まず、主人公の錦木千束(ちさと、声:安済知佳)は“歴代最強のリコリス”であるが、彼女の銃に装填されているのは殺傷力のない逆刃刀…ならぬ非殺傷弾。犯罪者であっても命を奪わないのが信条だ。普段はDAの支部である「喫茶リコリコ」の看板ウエイトレスとして働いており、そこへDA本部から“左遷”された井ノ上たきな(声:若山詩音)がやって来ることで物語が始まる。殺生を嫌う殺し屋と、ワケありの相棒。シリーズの前半はそんな2人が徐々に信頼関係を築いていく様子がメインで、ハードボイルドとはほど遠いほのぼのとした空気が漂う。

「ウォールナット」の名で活動していた年齢不詳の凄腕ハッカー、クルミ
「ウォールナット」の名で活動していた年齢不詳の凄腕ハッカー、クルミ[c]Spider Lily/アニプレックス・ABC アニメーション・BS11


そもそも、たきなには「実績を積んでDA本部に戻る」という願望があり、当初は先輩である千束のやり方や信条にも否定的。マジメで直情型の後輩が、どこか飄々とした先輩に的確なツッコミを入れる。その構図はさながら「けいおん!」における唯と梓のようでもあって、そこに元DAの情報部員だった店員、ミズキ(声:小清水亜美)と、年齢不詳の凄腕ハッカー、クルミ(声:久野美咲)が混ざると、「日常系コメディかな?」というレベルのほんわか会話劇が始まる。作品全体を包み込むこのふわふわとしたユルさが、クセになるほど心地よい。

作品情報へ