第26回PFFスカラシップ作品 『すべての夜を思いだす』に撮影監督の渡部眞が感服「映画の王道を体得されている」

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第26回PFFスカラシップ作品 『すべての夜を思いだす』に撮影監督の渡部眞が感服「映画の王道を体得されている」

PFFこと第44回ぴあフィルムフェスティバル2022が9月10日より国立映画アーカイブで開幕。同日、PFFが製作から劇場公開までをトータルプロデュースする長編映画製作援助システム“PFFスカラシップ”の第26回作品『すべての夜を思い出す』(2023年公開予定)の完成披露上映会が実施され、大場みなみ、見上愛、内田紅甘、清原惟監督が舞台挨拶に登壇した。

【写真を見る】ヒロインの1人、谷本早苗役に大場みなみ
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メガホンをとった清原は、2017年の『わたしたちの家』でPFFアワードグランプリを獲得し、国内外で高い評価を受けた新鋭監督。ステージに登壇した清原監督は「PFFスカラシップの企画に選出していただきまして。およそ5年という長い時間をかけて作った作品ですが、大変なこととか、本当にいろいろなことがあったのですが、すばらしいキャスト、スタッフの皆さんと一緒に映画を作り上げられたこと、今日こうやって無事に皆さんに観ていただけたことを、本当にうれしく思います」と感激した。

続いて大場が「今日はアットホームな雰囲気だと聞いてきましたが、皆さんニコニコと観ていただいているような気がします。こういう映画好きな方が集まる映画祭での、オープニング上映となるこの作品に参加できて光栄に思います」と挨拶。

萩野夏役の見上愛
萩野夏役の見上愛

見上も「私は去年、『プリテンダーズ』という作品で、PFFに来させていただき、それが生まれて初めての舞台挨拶でした。今日はその時の緊張を思い出しつつ、楽しくお話しできたらいいなと思っています」と言うと、内田も「5月に撮影があったので、9月に観ていただくのは大丈夫かなと不安がありましたが、今日は皆さん来ていただけてホッとしました」と安堵した。

企画の立ちあげから完成まで、およそ5年を費やした本作だが、「企画は2回くらい変わってこの形になりました」という清原監督。大場も「実はお話をいただいた時はまったく別の台本で、教習所で出会った3人の女性がキッチンカーをやるという話でした。それがスケジュールの都合で撮影が延びまして。教習所で出会う役ということで、免許を取りに行ったんです。でも、再開することになったら、私の役はガスの検針員に変わっていて。しかも点検するのは徒歩だし。でも清原さんのおかげで免許をとることができたので良かったです」と笑いながらコメント。

吉田文役の内田紅甘
吉田文役の内田紅甘

その経緯について清原監督は「キッチンカーの時は、世代の違う女性たちがつながる関係性みたいなものを描こうと思ったのですが、いろいろな事情で撮影が延期となったので、もう少し映画をコンパクトにしたいなと思って。3人の関係性を描くよりも、3人それぞれの時間をじっくりと描くことができていれば、この映画はいいのかなと思い、現在のかたちで再出発したという感じです」と説明。


劇中には、見上演じる夏が自転車に乗るシーンが多数出てくるが、見上は「実は自転車は得意じゃないんです」と告白。清原監督も「最初は『自転車に乗れないんですよ』と言っていたのに、みるみるうちに上手くなっていって。最終的には(見上と内田の)2人でビュンビュン遠くに行けるくらいになっていました」と撮影を振り返った。

清原監督は、キャスト陣について「相談をしながら撮影を進めることができた」と手応えを口にすると、大葉たちもそれぞれ自身が演じた役のことを「大好きです」と語った。

メガホンをとった清原惟監督
メガホンをとった清原惟監督

最後は監督から3人のキャストに感謝の想いを込めて花束をプレゼント。さらにステージには、「PFFアワード2017」で清原監督がグランプリを獲得した時の審査員だった撮影監督の渡部眞が花束ゲストとして登壇。

渡部は「5年前に審査した時に『わたしたちの家』は満場一致というか、ダントツでグランプリになりました。その時に李相日監督が『グランプリを獲ったこの映画はとても良かった。技術的には鼻につくかもしれないけど、この監督はこれで映画の匂いを感じてくれたんじゃないかな』と言ってましたが、今日観たら、匂いどころか、本当に映画の王道をしっかりと体得されて撮っているなと思い、感服しました。おそらく迷った5年間が結実した作品になったんじゃないかな」と清原監督に祝福のコメントを寄せた。

「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022」は、国立映画アーカイブで9月25日(日)まで開催中。ぜひ新たな才能をスクリーンでご覧いただきたい。

文/山崎伸子

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