『”それ”がいる森』相葉雅紀に聞いた仕事観「ふと自分の変化を感じられる瞬間を大切にしたい」

インタビュー

『”それ”がいる森』相葉雅紀に聞いた仕事観「ふと自分の変化を感じられる瞬間を大切にしたい」

『リング』(98)、『事故物件 恐い間取り』(20)など、ジャパニーズホラーの第一人者として知られる中田秀夫監督の最新作『“それ”がいる森』(9月30日公開)。物語は、田舎で農家を営む田中淳一(相葉雅紀)のもとに、東京で暮らしているはずの息子、一也(上原剣心)が突然訪ねてきたことから始まる。しばらくの間、淳一と一也はともに暮らすことになるが、近隣の森では怪奇現象が多発し、町では住民の不審死や失踪が相次いでいた。“それ”と呼ばれる得体の知れないなにかが、人々に恐怖をもたらす。本作にて8年ぶりの映画主演、およびホラー映画初主演を務める相葉雅紀に、本作の見どころはもちろん、初挑戦に際しての心構えや仕事観、役者のやりがいについて聞いた。

『“それ”がいる森』相葉雅紀へインタビュー
『“それ”がいる森』相葉雅紀へインタビュー[c]2022「“それ”がいる森」製作委員会

「何事もじっくり考えたうえで伝えるようにしています」

本作を「ホラーであると同時に人間ドラマでもある」と話す相葉は、ホラー初挑戦だと意気込みすぎず、普段どおりに役のイメージを膨らませていった。バラエティ番組で、農家を営む人々と関わる機会が多かったことは、淳一の役作りに活きたと振り返る。「僕、農家さんの手を見るのが好きなんです。なんというか…説得力があるんですよね」と、演じる際には手を土で汚し、農家の人々への敬意を込めた。


“説得力”という点においては、淳一の父親としての成長も重要と考えた。相葉いわく「ニュートラルな人」である淳一。「義父とソリが合わず、そこで反発して闘うわけでもなく、自分が家を出ていく。その選択が、淳一という人を表していると思う」と分析するが、息子との再会や奇怪な出来事との遭遇をきっかけに変化していく。この点については監督と話し合い、「『ここから、淳一のなかに責任感が芽生えていったと思う』というポイントを決めて、わかりやすく変化を演じた」という。

「農家を営む人々と関わったことが役作りに活きました」(相葉)
「農家を営む人々と関わったことが役作りに活きました」(相葉)[c]2022「“それ”がいる森」製作委員会

監督とセッションを重ねながらも、相葉が心掛けているのは、台本どおり演じること。そのなかで「台本どおりにやりたいんだけど、『どうしても、ここがつながらないんだよな』とか『ここ、難しいな』ということがあった時には、『僕はこうしたい』という意見を監督に持っていきます。意見を交わしたうえで、監督が求めるものに柔軟に応えたい」と話す。その時大切にしているのは、伝え方だ。「一つ、言葉が違えば印象が変わってしまう。思ったことをすぐ言うのではなく、じっくり考えたうえで伝える」。これは、相葉が日ごろから気をつけていることでもあるという。

相葉雅紀主演の『“それ”がいる森』(9月30日公開)
相葉雅紀主演の『“それ”がいる森』(9月30日公開)[c]2022「“それ”がいる森」製作委員会

中田監督からは「目を見開く、驚いた時に息を吸うといった、感情の動きを表現する方法を教えていただきました」と、恐怖のアウトプットについて指南を受けた。また、監督は演出にあたり、リアクションの大きさや緊迫度を数字で表すといい、相葉はこの演出について「演じやすかった」と振り返る。「小数点まで使うんです。すごいな、細かいなって思いました」と笑った。中田組の印象について「とにかく楽しそう」と、いきいきと話す相葉。「みんながテンション高く『もっとこっちの角度のほうが良いかな?』と話し合っていて。まるで小学生が、好きなものを手に取って遊んでいるような感じ。本当にホラーが好きなんだなと思ったし、僕も見ていて幸せになりました。こんなにも熱を持って、楽しそうに撮る現場に参加できたことがうれしかった」。作品にも、そうした熱が反映されているはずだと手応えを感じている。

作品情報へ

関連作品