『呪い返し師-塩子誕生』希島凛&鈴木まりや&吉田宗洋が語り合う役者の醍醐味、人生の大切な一歩
「一人でも応援してくださる方がいるならば、『頑張るぞ!』という力が湧いてきます」(鈴木)
――塩子との出会いを通して、登場人物たちそれぞれが新しい一歩を踏みだしていく姿も描かれます。皆さんが思い出す、自分にとっての“大切な一歩”がありましたら教えてください。
希島「私は、高校生のころから芸能のお仕事をさせていただいていました。進学校に通っていたので、私以外のみんなは勉強をして、大学を目指すという進路を辿っていましたが、私はお芝居が大好きで、将来もこのお仕事をずっとやっていきたいと感じていたので、周りの反対を押し切って『受験はしません』と意志を示しました。両親は、私に大学に行ってほしいと思っていましたが、『女優の道に進みたい』と説得して理解をしてもらいました。いまこうしてすばらしいキャラクターにも出会えて、役を与えていただくたびに、とても一人の人生では果たせなかったような貴重な経験をさせていただいています。18歳の時に大切な決断をして、本当によかったなと思っています」
――それほど女優さんになりたいと思われたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
希島「作品やCMを通して女優さんの笑顔を見ていると、苦しいなと思うような時でも『明日も頑張ろう』と思えた経験がありました。『いろいろな人に夢や希望を与えることのできる職業って、すばらしいな』と感じたことをきっかけに、女優の道を目指しました」
――鈴木さんはいかがでしょうか。
鈴木「27歳の時に共演させていただいた先輩の女優さんとの出会いが、私にとってとても大きなものだったと感じています。その当時、元気な時もあれば、少し落ち込んでしまう時もあったりと、自分自身がわからなくなる時があって。『本当の自分の性格かわからない。どうしたらそんなにステキな女性になれるんですか?』とその女優さんに相談したところ、『自分がなりたい自分になったらいいんだよ』と教えてくれました。憧れの方からのアドバイスなので、『自分のなりたい自分になろう』と心掛けるようになりました」
――鈴木さんにとって、前に進む一番の原動力となるのはどのようなことですか?
鈴木「やっぱりファンの方、応援してくださる方がいることです。一人でも応援してくださる方がいるならば、『頑張るぞ!』という力が湧いてきます」
吉田「僕は『ポルノグラファー』シリーズの三木康一郎監督や、本作の赤羽監督など、たくさんの方々から新しい一歩を踏みだすきっかけをもらっています。これまでご一緒したあらゆる監督、演出家さん、役者さんとの出会い、すべてが重なり合い、いまの吉田宗洋がいる。あえて役者を目指すきっかけとなった、“憧れの人”という意味でお話をさせていただくならば、僕にとって武田鉄矢さんの存在がとても大きいです。子どものころ、『刑事物語』や『プロゴルファー織部金次郎』シリーズが大好きで、テレビで放映されるたびに観ていました。僕は26歳くらいまでサラリーマンをやっていたのですが、そのころに改めて『刑事物語』を観る機会があって。『そういえば、俺は武田鉄矢さんに憧れていたんだ』と気づき、そこから役者の仕事を始めたんです。いつか武田さんと共演できたら、本当にうれしいなと思っています。サラリーマンから役者になると決めた時は、親も驚いたと思います。そこで自分が強い意志を示したからこそ、道を開くことができたと感じています」
――希島さんにとって、本作との出会いも大きなものになったと思います。改めてどのような作品になったと感じていますか?
希島「本作は5つのエピソードからなる映画ですが、どのお話も身近なテーマが描かれていると思いますので、呪いを返していく塩子のセリフを通して、観客の皆さんにとっても自分自身の心を見つめ直すきっかけができたとしたら、とてもうれしいです。ぜひ塩子のセリフにも注目して、劇場でご覧いただければと思います」
取材・文/成田おり枝