映画やドラマの撮影に欠かせない、“たまロケ”担当者に最近の多摩市と特撮の関係を聞いてみた!

インタビュー

映画やドラマの撮影に欠かせない、“たまロケ”担当者に最近の多摩市と特撮の関係を聞いてみた!

数々のロケが行われ、映画やドラマを通してもその風景が見られる街、多摩市。特撮とも縁が深く、「ウルトラマン」シリーズや「仮面ライダー」シリーズをはじめとする、あらゆる特撮作品が、多摩エリアをロケ地として撮影されている。なぜ多摩エリアが、特撮作品のロケ地に選ばれてきたのか?多摩市のフィルムコミッション「たまロケーションサービス」(以下、たまロケ)の代表を務める柴田孝司と、副代表の鳥居俊平太へのインタビューで、“ロケの街・多摩市”の歴史といまに迫る。

特撮のロケ地が、多摩ニュータウン開発の歴史と密接に関係「まだまだ発見がある」

2013年に円谷プロダクションから多摩市へ贈呈されたウルトラマンギンガ
2013年に円谷プロダクションから多摩市へ贈呈されたウルトラマンギンガ[c]円谷プロ

“たまロケ”は、ニュータウンの中核都市として発展する多摩を、映画・テレビなどの映像文化を通じて盛り上げようと、市民の手で作られた団体。「ロケの街『多摩』テレビ・映画で出会う街」をスローガンに、ロケ誘致活動を行っている。2009年に設立された“たまロケ”だが、多摩エリアではそれよりももっと前の1960年代に大規模ベッドタウンとして多摩丘陵を切り開く、多摩ニュータウンの開発が始まったころには、すでに数々の特撮作品の撮影が行われていた。

例えば1966年に放送された「ウルトラQ」の第15話「カネゴンの繭」には、当時多摩市聖ヶ丘に存在していた高台、通称”アパッチ砦”が印象的な場面で登場し、『仮面ライダー対ショッカー』(72)のクライマックスの決戦シーンは、多摩市の桜ヶ丘配水所で撮影を敢行。また旧多摩聖蹟記念館は、「仮面ライダー」シリーズの秘密組織“ショッカー”の基地としてもロケに使用されるなど、特撮ファンにはお馴染みの場所となっている。近年は「ウルトラマン」シリーズの撮影地としても知られており、とりわけ多摩市の小学校(北貝取小学校)跡地を中心に撮影された2013年放送の「ウルトラマンギンガ」以降、多摩市で盛んにロケが行われている。

多摩市北貝取小学校跡地にて撮影が行われた「ウルトラマンギンガ」
多摩市北貝取小学校跡地にて撮影が行われた「ウルトラマンギンガ」[c]円谷プロ

校舎の広さを活かしたダイナミックなアクションシーンも撮影された(「ウルトラマンギンガ」)
校舎の広さを活かしたダイナミックなアクションシーンも撮影された(「ウルトラマンギンガ」)[c]円谷プロ

多摩エリアとの相性のよさがあってこそ、多くの特撮作品が撮影されてきたように感じるが、鳥居は「特撮の撮影で最も制作陣が求めるのが、怪獣やヒーローが思い切り暴れられる場所。それに適したスポットがたくさんあったことが、ロケ地に選ばれた一番の理由ではないでしょうか」とにっこり。

さらに「多摩市には、独特で未来的な建物もたくさんあります」と、実験都市として開発されてきた多摩ニュータウンの持つ独特な雰囲気が、特撮の描く世界観とマッチしたのではないかと、想いを巡らせる。「例えば多摩モノレールの多摩センター駅も、2021年の『ウルトラマントリガー』のロケ地として登場しています。この駅の外観はとても特徴的で、どこか近未来的な雰囲気がありますよね。そのほかにも未来志向の時代に様々なものが作られて、『これはなんだろう?』と思うような建物もある。それは多摩市の財産だと思います。私たち自身、日々『いい場所はないか』とロケ地を探して回っていますが、まだまだ新しい発見がある。ロケ地としても魅力的な場所がいっぱい見つかるんです」と多摩市の特別な魅力を語る。

「お祭りにウルトラマンが駆けつけて、子どもたちと交流も図っています」

【写真を見る】「ガーデンシティ多摩センターこどもまつり」に駆けつけたウルトラマンとウルトラマンギンガ。子どもたちを大いに沸かせた
【写真を見る】「ガーデンシティ多摩センターこどもまつり」に駆けつけたウルトラマンとウルトラマンギンガ。子どもたちを大いに沸かせた[c]円谷プロ

ここからは、具体的な特撮作品の撮影秘話をいくつかご紹介したい。まず“たまロケ”と多摩市にとってエポックメイキングだったのが、2013年放送の「ウルトラマンギンガ」だ。本作以降、続けて「ウルトラマン」シリーズのロケが行われている。

鳥居は「このころは、まだ“たまロケ”はメインとして関わってはいないんですが」と前置きしつつ、「『ウルトラマンギンガ』は、学校を舞台とした作品になります。そこで、多摩市の小学校跡地を使って大部分の撮影が行われました。当時は、ウルトラマンギンガが多摩市長を表敬訪問しています。また『ガーデンシティ多摩センターこどもまつり』には、当時ウルトラマンが駆けつけて子どもたちとの交流も行いました。こういった取り組みは、市民の方々のロケへの理解にもつながっていると感じます」と明かす。


多摩を代表する「撮影のメッカ」、パルテノン大通り。普段は地元の人や観光客でにぎわっている
多摩を代表する「撮影のメッカ」、パルテノン大通り。普段は地元の人や観光客でにぎわっている

また多摩センター駅前の歩道、パルテノン大通りは「撮影のメッカ」だそうで、2020~2021年まで放送されていた「仮面ライダーセイバー」でもロケが実施された。柴田は「朝日に向かって、キャスト陣がパルテノン大通りを並んで歩いていくシーンが撮影されました。深夜2時くらいから撮影を始めて、奇跡的にきれいな朝日が差してきたんです」と述懐。鳥居は「比較的に人通りが少ないので、パルテノン大通りはよく撮影で使用されます。多摩市の複合文化施設、パルテノン多摩が映り込むと、背景も絵になります。ここのイルミネーションもロケ地として人気ですよ」と話す。

鳥居は、NHK「特撮ドラマ 超速パラヒーロー ガンディーン」の撮影も印象深いという。「学校の屋上を使用して、ロケをしました。屋上に、ビル群が並んだ街のミニチュアを立て込んで、手前のほうでミニチュアを映しながら、“借景”として多摩の本物の風景を混ぜて撮影していました。多摩には団地や建物も多くありますから、怪獣が暴れている場面を撮るにしても、いい背景が見つかるらしいです」と笑顔。特撮作品には、たくさんのアイデアと熱意が込められていることを実感している様子だ。

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