映画やドラマの撮影に欠かせない、“たまロケ”担当者に最近の多摩市と特撮の関係を聞いてみた!
「ロケ誘致活動が、地域活性化につながったらうれしい」
多摩市には、丘陵地帯ならではの高低差のある景色や、ニュータウンの街並み、そして緑豊かな公園など、魅力的なロケーションも豊富だという。
鳥居は「テレビドラマで特撮を撮影する場合、制作側にとっては日帰りでいろいろなシーンを収められるのが理想的」と都心にある制作会社や撮影スタジオからも1時間ほどと通いやすい、多摩の立地のよさをあげながら、「怪獣がビルを壊すようなシーンを撮るとすれば、近代的なビルも必要でしょうし、人々が逃げまどったり、アクションができる、だだっ広い場所も必要になりますよね。多摩市にはビルもあれば、大きなものから小さなものまで、公園もたくさんあります。だからこそ、『ウルトラマン』のスタッフも繰り返し撮影に来てくれたんだと思います。2016年の『ウルトラマンオーブ』では、市内の牧場跡地で撮影したりもしたんですよ」とコメント。
都心から日帰りで、バリエーション豊富なシーン撮影ができる。その利点はもちろん、特撮に限ったことではなく、あらゆる映画、ドラマのロケ地として活用されている。“たまロケ”代表の柴田は、円滑にロケを進めるために欠かせないのは「制作サイド、そして市民の方々とのコミュニケーション」とのこと。
「商店街や住宅街を使ってロケをする場合、もちろん朝から晩まで、たくさんの人々が行き交います。円滑にロケを進めるためには、まず制作サイドに『この場所は、商店街の開かない時間なら使えます』『人の少ない時間帯ならばできる』『こちらの道路を使用したほうがいい』など、警察や自治体を含めた相談をしながら、あらゆる案を出していくことが大切になります。そして“たまロケ”は実際のロケにも立ち会い、市民の方に声をかけて、理解と協力をお願いしていきます。生活圏にお邪魔することで、煩わしさを感じる方ももちろんいらっしゃると思います。そういった時にも制作サイドと市民の方々の橋渡しとなるのが、我々の役割なんです」と力強く語る。「大変なこともありますが、地元でロケをしている作品に対して、市民の方々に期待、応援してもらえるようになったらとてもうれしいです」と奮闘している。
“たまロケ”としての願いは、ロケ誘致活動が、多摩の地域活性化へとつながることだという。柴田は「家族や友人のなかで、『この場所が、映画に出ていた』『あれって、多摩だよね』と会話が弾むこともあるはず」、鳥居も「地元がロケ地となることで、映像制作に興味を持つ子どもたちが育っていくかもしれません。そうなっていったら、本当にうれしいです」と目尻を下げ、「それにやっぱり、多摩で撮影をした作品が完成するとうれしいですから。ものづくりに携わっていると感じられることも、我々のエネルギーになっています」とやりがいを語る。
「映画やドラマを通して、知らない間に多摩の風景を見ているかもしれません」
また、近年では、堤真一主演のドラマ「妻、小学生になる。」に、パルテノン大通りがお目見え。清原果耶主演のドラマ「ファイトソング」は多摩川堤防道路での撮影も行われ、二宮和也主演の日曜劇場「マイファミリー」も貝取・豊ヶ丘商店街、落合商店街、落合南公園など、市内各所でロケを敢行。竹内涼真主演の「六本木クラス」第1話にもパルテノン大通りや、多摩センター駅周辺が登場している。
また巨匠マイケル・マンが全編オール日本ロケで描いた、WOWOWとHBO Maxの日米共同制作によるドラマシリーズ「TOKYO VICE」では、新宿、渋谷、六本木などと共に多摩市もロケ地に選ばれ、“たまロケ”始まって以来初となる大型海外作品の撮影が実現した。鳥居は「宝野公園の桜も作品に映しだされています。ハリウッドのスタッフやキャストが集い、コロナ対策チームだけでも相当な人数がいたと思います。ハリウッドのスケールはすごかった」と回想。「皆さんも、映画やドラマを通して、知らない間に多摩の風景を見ているかもしれません。いつか多摩で撮影をした作品を集めて、地元映画祭のようなものができたらなと思っています」と願っていた。
取材協力/TAMA映画フォーラム実行委員会
取材・文/成田おり枝