北大路欣也が「牧野省三賞」、竹野内豊が「三船敏郎賞」を受賞!「京都国際映画祭2022」華やかに閉幕
「A画とAートでAやんか!」をテーマに、世界各国の作品を、会場とオンラインで開催した「京都国際映画祭2022」。期間中、100年前の映画から最新鋭のVRアート、さらにはレコードコンサートまで、多種多様な芸術が京都の街を彩った。その授賞式が16日に京都・よしもと祇園花月にて開催され、日本映画の発展に寄与した後進映画人を表彰する「牧野省三賞」を北大路欣也が受賞。「今日から心新たに、ゆっくりと前進していきたい」と喜びの気持ちを口にした。そして、数々の名優が受賞している「三船敏郎賞」を竹野内豊が受賞。「同じ日本人として誇らしく、偉大な三船敏郎さんの賞をいただけるとはまさか夢にも思わなかった」と語った。
「牧野省三賞」は、日本映画の父と呼ばれる京都の映画人、故牧野省三監督の遺徳を偲び、日本映画の発展に寄与した後進映画人を表彰する目的で1958年に創設。2014年から京都国際映画祭が、長い歴史を持つ栄誉ある賞を引き継いだ。選考委員を務めた京都国際映画祭名誉実行委員長の中島貞夫は、「いまから60年近く前、京都で映画祭が始まった最初のころに、牧野省三賞を受賞したのが北大路欣也さんのお父さんの市川右太衛門さんでした。親子二代にわたり受賞するのは大変なことです」と感慨深げ。トロフィーを受け取った北大路欣也は、「いまから66年前、13歳の時に父の主演映画『親子鷹』でデビューしました」と振り返り、「父は『とてもお前にはできない』と反対でしたが、偉大な先人の方々に力を貸していただき、いまなお東映京都撮影所ですばらしいスタッフと共に汗をかきながら頑張っています。いまもこうして働けるとは、こんな幸せなことはありません」とコメント。
「三船敏郎賞」は、黒澤明監督の作品をはじめ、戦後の日本映画界を代表するスター俳優として国内外でいまなお絶大な人気を誇る俳優・三船敏郎の名を冠し、三船敏郎のように世界へ誇れる大俳優を応援すべく、2014年の京都国際映画祭スタート時に創設。これまで役所広司、仲代達矢、阿部寛、浅野忠信、佐藤浩市、中井貴一、小林稔侍、桐谷健太と、そうそうたる顔ぶれが受賞してきた。
選考委員の奥山和由総合プロデューサーは、「映画を映画たらしめる、その一言に尽きる。三船敏郎もそういう方でした」と絶賛。「『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』や『シン・ゴジラ』と、どのジャンルでも主演映画俳優のオーラを持つ、いまどきなかなかいない貴重な俳優です。昨日、暗い店で一緒に飲んでいたんですが、つくづく『いい男だな』と惚れ惚れしました」と讃えた。竹野内豊は、およそ20年前にある映画の撮影でイタリア・フィレンツェを訪れたことを回想。「イタリア人のスタッフから撮影初日に『Do you know Mifune? best actor.』と。『おまえも頑張れよ』と温かいエールをいただきました。三船さんは世界中の人たちを、いまも色褪せることなく魅了し続けていて、本当にすばらしいと思いました。そんな偉大な三船さんの賞をいただけるとは、身が引き締まる想いです」と感激を口にした。
また、京都国際映画祭を彩ったアート部門の総括も行われた。アートプランナーを務めたおかけんたは、「今年は『ユートピアなのか?ディストピアなのか?』をテーマに、ボーダーラインのない世界観を表現しました」とし、「映画とアート、今年はその他も、とお芝居なども含め様々な試みをしました」と総括。京都市京セラ美術館で展示された最新鋭のVRや、「第9回クリエイターズ・ファクトリー(アート部門、子ども部門)」の展示の様子を紹介し、「過去の8年間とはまた違うアートを見ていただくことができました」と充実の表情を見せた。
クロージングセレモニーでは、京都国際映画祭実行委員会名誉実行委員長の中島貞夫監督とゲストとの鼎談を繰り広げた。北大路欣也との鼎談では、東映京都撮影所時代の思い出や、時代劇、殺陣、映画にかける役者やスタッフの熱い想いを当時の懐かしいオフショットを交えて話に花を咲かせる一幕も。最後まで大盛り上がりで「京都国際映画祭2022」は幕を下ろした。
取材・文/中野純子