ついに低迷期を脱出か?ニコラス・ケイジ、”かつて頂点を極めた世捨て人”役で魅せたリアリティ

コラム

ついに低迷期を脱出か?ニコラス・ケイジ、”かつて頂点を極めた世捨て人”役で魅せたリアリティ

ニコラス・ケイジの主演作『PIG/ピッグ』が東京の新宿シネマカリテほかにて順次公開中だ。個性的なラインナップで人気の映画祭「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2022」で絶賛された本作は、本国でもインディペンデント・スピリット賞、シカゴ映画批評家協会賞ほか多くの賞に輝いた話題作。山で暮らす孤独な男が盗まれたブタを奪還するため突っ走る異色のサスペンス映画である。

『PIG/ピッグ』での鬼気迫る演技が観客&批評家からも大絶賛!
『PIG/ピッグ』での鬼気迫る演技が観客&批評家からも大絶賛!2020 Copyright [c] AI Film Entertainment, LLC

31歳の時に『リービング・ラスベガス』(95)で第68回アカデミー賞主演男優賞に輝くなど、早くから演技派として高い人気を誇っていたケイジだが、女性や金銭問題などスキャンダルにも事欠かないお騒がせセレブとしての一面も。しだいに本業も低迷気味になり、近年はB級映画が主戦場になっている。そんななかで公開された『PIG/ピッグ』は批評家から高い評価を獲得しただけでなく、かつて頂点を極めた世捨て人という設定がケイジ本人と重なることでも注目を浴びた。

“アラ還”ニコラス・ケイジのキャリアに期待したい
“アラ還”ニコラス・ケイジのキャリアに期待したい[c]Everett Collection /AFLO

若くして演技派としての実力を示し、ハリウッド大作にも立て続けに主演!

まずはケイジのキャリアを振り返ってみたい。1964年に米国カリフォルニア州で生まれ、両親は大学教授とバレエダンサー、叔父は巨匠フランシス・コッポラという良家に生まれ、10代半ばより俳優を志向。本名ニコラス・コッポラとしてコッポラ監督の『ランブルフィッシュ』(83)などに出演するが、“七光り”を嫌ってすぐにニコラス・ケイジに改名した。ちなみにその名はマーベルのヒーロー、ルーク・ケイジ(パワーマン)からの命名で、コミックコレクターとしても知られるケイジらしいチョイスである。

その後は順調に出演作を重ね、第45回ゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされた『月の輝く夜に』(87)やデヴィッド・リンチ監督作『ワイルド・アット・ハート』(90)のころから日本でもファンが急増。前述の『リービング・ラスベガス』でのオスカー受賞もあり、ハリウッドでの地位を確立していった。

アカデミー賞主演男優賞を受賞した『リービング・ラスベガス』
アカデミー賞主演男優賞を受賞した『リービング・ラスベガス』[c]Everett Collection/AFLO

『ザ・ロック』(96)を皮切りに大作にも進出し、『コン・エアー』(97)や『フェイス/オフ』(97)、「ナショナル・トレジャー」シリーズなど次々にアクション映画に主演。2004年と07年には映画スターの人気の指標とされるマネーメイキングスターでトップ10入りを果たしている。俳優業だけでなく製作会社サターン・フィルムズを設立、プロデューサー業に加え、『SONNY ソニー』(02)では監督を務めるなど多才ぶりを発揮した。

冒険家の主人公が「アメリカ独立宣言書」に記された秘宝を追い求めることになる『ナショナル・トレジャー』
冒険家の主人公が「アメリカ独立宣言書」に記された秘宝を追い求めることになる『ナショナル・トレジャー』[c]Everett Collection/AFLO

度重なる結婚と離婚を繰り返し、B級映画にも次々と出演するように

順調にキャリアを伸ばす一方、私生活では女優のパトリシア・アークエットや歌手リサ・マリー・プレスリーらと4度の結婚と離婚を繰り返し、妻へのDV容疑などで逮捕されると、4人目の妻でメイクアーティストのエリカ・コイケとは結婚から4日で無効申請を出して話題を呼んだ。さらに、収集欲が強く高級車から豪邸、城など欲しいものはなんでも買ってしまうため、高額な出演料を手にしながらも税金すら滞納する困窮状態に陥った。2010年代以降、アクションやスリラーを中心に安手の映画に積極的に出演する姿からも厳しいお財布事情がうかがえる。

2010年にオサマ・ビンラディン誘拐を企てた容疑でパキスタン当局に拘束されたアメリカ人の実話を映画化した『オレの獲物はビンラディン』
2010年にオサマ・ビンラディン誘拐を企てた容疑でパキスタン当局に拘束されたアメリカ人の実話を映画化した『オレの獲物はビンラディン』[c]Everett Collection/AFLO

ただし、打倒オサマ・ビンラディンを掲げ旅立つトンデモ野郎を描いた『オレの獲物はビンラディン』(16)、H・P・ラヴクラフト原作のコズミックホラー『カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇』(19)ほか、B級枠ながら出演作にはフックの効いた作品が少なくない。そんな眼識に加え、どんな映画でも手抜きのない演技を見せる役者馬鹿な姿勢はファンにとってもうれしい限りだった。

地球外変異体が放つピンク色の光によって心や体に影響を受けていく家族を描く『カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇』
地球外変異体が放つピンク色の光によって心や体に影響を受けていく家族を描く『カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇』[c]Everett Collection/AFLO
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