ペドロ・アルモドバル監督の“女性賛歌”映画最新作『パラレル・マザーズ』は「いま観ることに意味がある」
10月25日、映画『パラレル・マザーズ』(11月3日公開)のトークショー付き試写会が都内にて開催。コラムニストの山崎まどか氏、Neol編集部の桑原亮子氏が登壇し、トークショーを行った。
本作は、同じ日に母親になった2人のシングルマザーがたどる運命と、不思議な絆を描くヒューマンドラマ。世界のあちこちで戦いが続く今、“目の前の人を愛することの大切さ”を教えてくれる、ペドロ・アルモドバル監督渾身の一作だ。ちなみに、同監督は“女性賛歌三部作”とも呼ばれる『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール』で世界的に高い評価を受けている。
本作のジャニス役は、いまや監督のソウルメイトとも呼べる『それでも恋するバルセロナ』のペネロペ・クルスが演じ、17歳で母親となったアナの役は、長編映画出演2作目となるミレナ・スミットが演じる。
トークショーでは、桑原氏が「今回、外せないのはスペイン内戦の話があるところでは」と問題提起。すると山崎氏も「アルモドバルと言えば、一種のメロドラマのような形式ができあがっていると思うのですが、そういうところに政治的な話が出てくるのはちょっと意外な気もします。でも現実には、アルモドバル監督はもともと内戦に触れているところがあったと、桑原さんが話していましたよね。フランコ政権以降の自由は自分たちが勝ち取ったものなんだと」と納得の表情。
さらに「(内戦もテーマになっているのは)彼がいまの世界の状況を無視できないというのもあると思う。つまり、独裁政権というものに傷を受けた国にいて。私たちもスペイン内戦のことを深く理解しているわけではないんですが、あの時、独裁政権というものに対抗するために、世界中からジャーナリストや文化人が応援に駆け付けたというのは忘れてはいけないこと。それがヨーロッパ分断というのも招いて、第二次世界大戦の大きな火種にもなったわけですけど。やはり、いま私たちは独裁政権というものがどういうものか、まざまざと見せつけられているようなときで。『パラレル・マザーズ』を、いま観ることはとても意味のあることだと思う」と山崎氏。
「アルモドバル監督は、“他人事ではない戦争の物語”というものを描きたかったのかなと。個人史と国の歴史はイコールなんだ、パラレルなんだというのを感じさせる作品。ここは見逃せないポイントなんじゃないかと思いました」と分析していた。
なお、本作はヴェネツィア国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。第94回アカデミー賞では主演女優賞・作曲賞でノミネートされているほか、既に23受賞83ノミネート(2022年7月11日時点)を果たしている。
取材・文/平井あゆみ